第298話
――なんてこと……。まずいわね。
この事態にさすがのセセリナも顔色を変えて動揺を見せた。
そして彼女はため息をつくと、険しい口調にて言葉を発する。
「厄介な事になったわ。敵がかなり強力な障壁を張ったの。主塔の弩砲でも歯が立たない、打つ手なしよ」
その言葉は近くにいる大男達に向けられたものではなかった。
彼女の言葉は風に乗り、主塔から眼下で戦うレグス達のもとへと運ばれる。
これもまた偉大なる風より生まれた精霊の為せる技であった。
「あとどれほど残っている?」
レグスの質問にセセリナが答える。
「四機ほど潰して、あと二機ってところかしら」
「その程度の数なら魔術師共でもなんとか防ぎきれるだろう」
敵の投石機の数が減った為に、その攻撃間隔には余裕が出来始めていた。
今の頻度の攻撃ならば城を守る魔術師達でも十分に対応出来るはず、もちろん防備に当たる魔術師の手は塞がる事になるのだが。
「だと良いんだけど……」
レグスとセセリナがそのような会話のやりとりをしていると、カムが割り込み入ってくる。
「セセリナ、敵の障壁の守りは完全なものか?」
彼女の質問の意図を掴みかねるのか、セセリナが聞き返す。
「完全?」
「まったく隙間がないのかと聞いている」
「そりゃあ岩を飛ばしてるんだから、頭の部分にはぽっかり穴が空いてるでしょうけど……、だけどここからじゃあどうしようもないわ」
困惑気味に回答するセセリナの言葉を聞いて、カムは言う。
「いや、十分だ。それだけの穴があるならな」
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