第296話

「四柱赤花の四方陣ですか。しかしそれほどの術となると使い手の数が……」

「あの弩砲の威力を見たか!! 半端な障壁では破られるだけだ、数が足りぬと言うのならば、その分の魔術師共を前線より急ぎ連れ戻せ!!」

「はっ!!」

 魔法の障壁により弩砲の攻撃を防ごうと考えた枯れ森のエルフ達、しかしその準備には多少なりとも時間を要した。

 その間にも、城の主塔より飛来する矢によって巨大な投石機が、一機、二機と破壊されていく。

 そして皮肉にも残存する兵器の数が減った為に、魔術師の数が足りるようになり、最初の攻撃を含めて計四機もの投石機が破壊された後になって、ようやく彼らは術の準備を終える事が出来た。

 枯れ森のエルフの魔術師の中でも精鋭たり得る者達が投石機の四方を囲み、詠唱を始める。

 彼らの声に合わせ、描かれた魔法陣が妖しく輝き、やがてそこから投石機を囲むようにして赤い蔓の壁が作り上げられていく。

 複雑な紋様を描くそれは遠目からには、赤い花が咲き乱れているようにみえた。

 ダークエルフ達の秘術『四柱赤花の四方陣』が発動したのだ。

「なんだあれは!?」

 主塔より目にした妖しく輝く障壁術に、壁の民達は動揺を見せたが、そんな彼らに対してセセリナはためらいなく言い切る。

「かまうことないわ。この弩砲の威力ならあんな術、打ち破れるわよ」

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