第295話

「よぉし、じゃんじゃんいくわよ!!」

 精霊の指示に従い、大男達は巨大な弩砲の二射目へと取り掛かる。

 そして弩砲に矢が込められると、その大きな矢にセセリナが近付き、何やら詠唱を始めながら複雑な文字や図形を青白き線にて刻み込んでいった。

 何故届かぬはずの攻撃が届いたのか、その答えがこれであった。

 そう、決して壁の民達やダークエルフ達が弩砲の射程を読み間違えたわけでない。古き精霊のスティアの力によって、主塔の弩砲の射程が伸び、威力までもが向上していたからなのだ。

 スティアは『始まりの大風』より生まれた精霊であり、風の加護を受ける事は難しい事ではなかった。

 無論これだけ大きな弩砲の矢だ。その射程と威力を風の力を借りて向上させようとすれば、セセリナの霊体にかかる負担は少なくない。

 それでもそれをやるだけの価値はあった。

 事実、大岩を飛ばす投石機を見事に破壊出来たのだから。

「やむを得ん……」

 シュドゥラ達には主塔の弩砲の矢が届いた理由などわからない。

 しかし、相手の弩砲の矢がここまで届くというのならやる事は一つ。

「四柱赤花だ。四柱赤花の四方陣を張れ!!」

 シュドゥラの口から、彼らの秘術である魔法障壁術の名が飛び出した。

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