第270話
これまでの経緯からゴルゴーラ王は覚悟を決めた。
そして彼女の言に従い、戸惑う大男達に指示し城主の間より追い出してしまったのである。
レグス達を除けば、部屋に残されたのはゴルゴーラ王とベベブのみである。
人が減り、がらんとした部屋の中で王は精霊の少女に言う。
「して、人を払ってまでせねばならぬ話とはいったい何であるか、古き精霊殿よ」
王の問い掛けに深刻な口調にて精霊の少女は語る。
「夜より深し闇の者共がよからぬ事を企み始めている。此度の攻撃はその始まりに過ぎない。ここで対応を誤れば『黒き預言』の通り、暗黒の世が訪れるその始まりとなろう。それを防ぐ為にも、我はここに来た」
『黒き預言』という言葉に王は反応せずにはいられなかった。
その予言はマルフスが口にした恐ろしき暗黒の世の到来を告げるものであり、この状況下、決して笑う事の出来ぬものとなっていたからだ。
レグス達はこの部屋にくる前に、マルフスについて、そして予言の事をガァガより聞き出していた。ここで『黒き預言』の話題をだせば、より話に説得力を持たせられるとの算段が彼らにはあった。
だが、実はそれだけではなかった。
『黒き預言』が、既に五百年も昔に、ある星読みによって残されていたものである事を、精霊の少女は知っていた。
彼女の言葉は決して打算的なものだけではなかったのだ。
そして五百年前の『黒き預言』を知るのは壁の民の王もまた同じ。
高名な星読みの預言が先にあり、それを知っていたからこそ、マルフスの予言は恐れられると同時に、それを真似たにすぎぬと笑われたのだ。
笑われていた、今日この日が来るまでは……。
「『黒き預言』が告げる暗黒の世の到来を防ぐため……、我らに手を貸してくれると言うのか」
大きな困難を前にして、ある種すがるように王は精霊に問い掛けた。
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