第271話
「力は貸そう。だが我の力だけでは、この困難を乗り切るに及ばぬ。あの穢れの軍勢を打ち払うのは、あくまでお前達の役目。我は幾ばくかの助力と助言を与えよう」
「助言……、いったい我らにどうせよと」
「持てる力を発揮せよ。その為にもまず内に潜む害虫を取り除かねばならない」
「内に潜む害虫……」
怪訝に眉をひそめる王を見て少女は言う。
「聖水を」
彼女のその言葉に、ガァガの部下の一人が王のもとへと歩み、その手に握られた杯を差し出す。
杯の内には水らしき液体がたゆたっていた。
「これを、飲めと?」
王の言葉に精霊はただ頷く。
それを見てベベブがまたも喚き出す。
「聖水だと!? 貴様ら正気か!! 陛下を試すが如くの所業、まこと不敬であろう!! 陛下もなりませぬ、万が一毒でも入っていたりすれば、取り返しのつかぬ事に!!」
しかしそんな彼を無視し精霊は王に言う。
「案ずるな。ただの聖水だ」
彼女の言葉に覚悟を決めゴルゴーラ王は、杯をガァガの部下から受け取るとその内の水を一口含む。
ごくりと液体が喉を通るのを眺めると、ベベブは悲痛な表情を浮かべて声を漏らした。
「ああ、ああ、なんて事を……」
しばらくして、王が一言。
「……ただの水だ」
それを聞き、精霊の少女は言う。
「そうだ。人にとってはただの水と変わりない。だがもしも人ではなく、まやかしに身を包む悪しき魔の者共がそれを口にすれば……」
杯を王より受け取った部下が、それをレグスへと手渡す。
そしてレグスは杯を手に、地に伏せるベベブへと近付いていった。
「や、やめろ!!」
近付く東黄人に顔を青白くするベベブ。
その怯えようは尋常ではない。
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