第196話
「礼などいらない。もし礼を言う事があるならライセンに言え。あの子が知らせてくれたから、お前を助けられた」
「……あの鳥に俺を見張らせていたのか」
「万が一の時に備えてな。実際そうしていなければ、最悪の事態になっていたかもしれん」
カムはセセリナの事を知らない。本当に少年の身が危なくなったら、精霊の助けが入る事など知らないのだ。
だから彼女は鷹の知らせを聞いた時、急ぎ少年のもとへと駆けつけた。
「そうなりゃよかった!!」
少年が声を荒げる。
「そうなっちまうなら、それまでの奴って事だ」
自身を粗末に扱う事によって、まるで己を試しているかのようなファバの発言。
少年の胸中にある苛立ちと無念をカムは知る。そして、彼女は落ち着いた口調で諭すように語った。
「お前は勘違いしている、……己の身を弄ぶように無茶をしてみたところで、何一つ証明する事は出来ない」
しかし女の一般論もファバには伝わらない。
彼は知っている。よく知っている、目の前でその無茶を成し遂げてきた男の存在を。
「あいつはやってみせるさ、どんな無茶だってやってのける。今回の事だってそうだ。相談の一つもなしでいきなりだ。いきなり、あんなでかい奴らに喧嘩売るような真似して、平然としてやがる。団の奴らが呆れるような真似を、平然とやってのけっちまう」
ファバが見てきたレグスの姿。
「どんな奴が相手だってブチのめしちまう。どんな化け物が相手だってぶった斬っちまう。きっと、今回の決闘だって……、どうせあいつは上手くやっちまうのさ!!」
無茶な事だろうが、無謀な事だろうが、結局やってのけてしまうレグスという存在。
あの男は圧倒的な強さを、ファバの目の前で証明してきた。その証明こそ、少年が欲する物に他ならない。
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