第154話
「たいした覚悟だ。だが耐えられるかな。壁の先で生まれるであろう悪を前にして、それを見過ごすような真似が出来るのか?」
「今さら己の生き方を変えるつもりはない。だが人も獣も、必要があれば命を食らう性に生きている。ある程度のことは目をつぶると約束しよう」
「ある程度」
「そうだある程度だ。物事には限度がある。巨悪を前にしてそれを許すほど、私の心は腐ってはいない」
女の言葉に難しい顔で考え込むシド、そして。
「……よかろう。レグスの案を採用しよう。遊牧民の娘の壁越えを手助けする代わりに、彼女には私達の活動の拠点となるような場所が見つかるまで協力してもらう」
女は再び笑顔になり、感謝の言葉を告げる。
「恩に着るぞ、シド!!」
「礼など必要ない。お前の鷹の力を私達の開拓団が欲したまでの事だ。出来る事なら短い付き合いで済む事を願っているよ。その方が互いの為になるだろう」
ローガ開拓団に一時的の約束ではあるが、遊牧民の女が参加する事となった。
彼女は名をカムと名乗り、自分が六百年も昔、フリアの北東の草原に大きく栄えた遊牧民『ジバ族』の出身だと言う。
この正義感の強そうなジバ族の女の参加をベルティーナは嫌ったが、鷹を使った空からの地形、情勢把握という手段の魅力には大きく抵抗出来なかった。
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