第155話
カムを加えて再び東へと進み出すローガ開拓団。
「さっきは助かった、ええっとゲッカだったかな」
カムはレグス達の隣に馬を進ませてくるなり彼らに声をかける。
民族は違えど一目で同じ東黄人とわかるのはこの開拓団では今、レグスとファバの二人しかいない。団員一通りの紹介を受けた中でもこの二人は彼女の印象に残りやすかった方だろう。
「別に気にするような事ではない。シドも言っていたがお前の能力を評価してのことだ」
「そうか、だが助かったのは事実だ、礼を言うぞ」
涼しい女だ。それでいて温かさも感じられる。声がいい。姿勢がいい。
そのどれもに共通する事、この女には影がない。
シドは目を見てこの女の生き方を語ったが、レグスから見れば、他のあらゆる所作までもが女の人格を表現しているように見えた。
異物だ。
混じる場が違ったのなら、彼女はただの良き人、立派な人物としてただ歓迎されるのだろう。
悪に挑み、正しく生きようとする女。
それがこの開拓団では、異物にすぎない。
間違った判断だったのだろうか。このような人間を灰色の地へ連れて行き、利用しようなど。
自己の利益の為に、他者を犠牲にする。するかもしれない選択。
らしくなかった。今更すぎる問いだった。何かが変わり始めている。レグスの中で何かが少しずつずれ始めている。
セセリナに己の宿命を知らされた時からか、それとも隣をいくファバとの出会いからだったか。あるいはもっと前、最初から……。
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