第128話

「……トウマ。よく聞け、お前はもう理解出来るはずだ。自分がそうではないからと、異なる者を忌み嫌い、軽蔑する事の愚かさを」

「それは……」

「男が男を愛し、それで一体誰が損をする」

「誰がって……」

「誰が傷つけられるというのだ」

 レグスの目は真剣そのものだ。別に怒っているわけでもない。軽蔑しているわけでもない。ただ真剣にファバに問おうている。

「……わかったよ。俺が悪かった。あんた、ディオンだっけか、……気持ち悪いだなんて言って悪かったな。あんたは俺の顔を見ても何も言わなかったのに」

「はは、素直でいいね。気にするな坊主、別になれたもんだ。なぁ、ツァニス」

 ツァニスは無言のまま目をファバとディオンの方へ交互に向けるだけであった。

「ありゃりゃ、ちょっとお怒り気味かい。まあ気にするな。あとで俺が可愛がってやれば、機嫌もすぐ直るだろうしな」

 その台詞に机をどんと叩きツァニスが立ち上がる。

 彼は女のように見えるほど整ったその顔を赤くし、何か言いたげにディオンを睨んでいた。

 そんな様子にガドーが大笑いして言う。

「ガハハ、痴話喧嘩なら余所でやってくれよ」

「おお、そうだぜツァニス。今はゲッカ達の歓迎会の最中なんだぜ。楽しく飲もうじゃねぇか」

「帰る」

 ツァニスが言う。

「酒がまずくなった。俺は先に帰る!!」

 銀貨一枚をその場に置き席を立つツァニス。彼はそのまま店の外へと出て行ってしまう。

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