第123話
「子供?」
「ああ、あの人らは赤ん坊の頃旦那に拾われて育てられたのさ。最初は皆、トーリの爺さんに魔術を教わっていたそうだ」
「トーリ?」
「まだ爺さんの事は聞いてなかったっけか。トーリの爺さんは旦那に古くから仕えてる魔術師でな。その道じゃ結構有名らしいが、俺は魔術についてさっぱりだからよくは知らん。今は王都の方で旦那の様子を見てるよ。爺さんとは壁で合流する事になるだろうな」
「その魔術師トーリがあの奇妙な能力も授けたのか?」
「あれは……」
そこでガドーの言葉が少し止まるが、何やら諦めるように溜め息をついた後、続けた。
「詳しくは知らんが、教えられてどうのってものではないらしい。生まれた時からすぐってわけでもないようだが、ガキの頃にはもうあんな感じの不思議な力は持ってたみたいだな」
「他の三人と違ってグラスは魔術のみならず剣を使うようだな」
「グラスの坊ちゃんは魔術より剣の方に興味を持ったらしく、途中からシドさんが教えるようになったらしい。まぁグラスの坊ちゃんにとってシドさんはお師匠様って事になるな」
「ベルティーナやミルカはロブエルを慕っているように見えたが、男二人の方はえらく冷めていたな」
「グラス坊ちゃんは昔から誰に対してもあんな感じさ。けどギルの坊ちゃんの方は……あまり旦那とは上手くいってないみたいだな。俺達の事も好くは思っていないようだしな」
「四年も前からか」
「俺が雇われだした頃にはもうあんな感じだったな」
「そんな男が何故わざわざ今回の壁越えまで付いて来る。もう魔術師として独り立ち出来るだけの力はあるだろう」
「そりゃ、仲が悪いたって育ての親だぜ。見捨てるわけにもいかんだろう……って言いたいところだが……」
「なんだ」
「ぶっちゃけ他の三人が行くからだろうな」
「兄弟愛か」
「そんなところだ。ギルの坊ちゃんが心許してるのはあの三人だけだろう。シドさんやトーリの爺さんとも仲が良いようには見えなかった」
「兄弟間の仲自体はどうなんだ」
「ああ……、まっギルの坊ちゃんの旦那に対する態度はちょっとな。特にベルティーナ嬢さんは良い顔しないぜ。近頃の旦那の境遇もあってか、よく言い争いになってるよ。どうやらギルの坊ちゃん、旦那見捨てて……って、喋りすぎだな俺」
「見捨てて、どうしたんだ?」
「はぁ、そこまで言っちまえば、もう同じようなもんか……。つまりだな。旦那があんな事になって仕えてた人間もほとんど逃げるように辞めていっちまってな。ギルの坊ちゃんもそれに加わって、旦那と決別しようとしてたのよ」
「それは興味深い話だ」
「けど、さっきも言ったけど他の兄弟は残る気だったからな。まぁ、ただ残るだけならギルの坊ちゃんもそのままサイナラしてたんだろうが、グレイランドに行くとなると、さすがに心配だったらしく、説得しようとしたみたいなんだよ。もう旦那なんかお前達も見捨てちまえってな」
「ベルティーナはさぞ怒った事だろう」
「そりゃあもう大変よ。二度と顔を見せるなや、果ては消し炭にしてやるだ。騒ぎに駆けつけたシドさん達が必死になって止めてどうにかなったけど、もうあれから二人の仲は最悪の状態だな。というより、ベルティーナ嬢さんが一方的に嫌ってる感じだ」
「何故、ギルだけがそこまで他とロブエルに対する態度が異なる。単純な性癖の差とも思えんが」
「まぁ、いろいろあるのさ……」
それ以上は追求するなとガドーの目が言う。
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