第108話

 レグスとセセリナの会話についていけなくなったのか、ここでファバが口を挟む。

「ちょっと待ってくれよ。魔力だ、霊力だ、さっぱしわかんねぇよ。魔力と霊力って同じようなモノじゃねぇのか?」

「あんたほんと何も知らないのね。レグス、やっぱこの子は置いてった方がいいんじゃないの?」

 セセリナはグレイランドにファバを連れて行く事に反対していた。グレイランドを目指す事が決まり、パネピアのボウル村を出る時、ファバを村に残していくようレグスに忠告していたのだ。

 だがそれをレグスも、そしてファバも聞き入れはしなかった。

 グレイランドの危険はレグスとて理解していたが、ファバの覚悟も十分と知っている。少年の思いを無理に捻じ伏せるような真似はレグスには出来なかった。

「今さらそんな話は無しだぜセセリナ。それより、けちけちしないで違いを教えてくれよ」

「別にけちして教えないなんて言ってないでしょ。あんたの空っぽ頭でもわかりやすく教えてあげるにはどうしたらいいか、考えてたのよ」

「それで、結局何なのさ、魔力と霊力の違い」

「ったく……。簡単に言えば、魔力は肉体に宿る力で、霊力は魂に宿る力よ」

「おお、何かわかるような、わからないような」

「魂は生ける全ての者が持っているわ。つまり人間も、植物も、私も、あなたもね、ファバ」

「俺にも霊力ってのがあるって事か?」

「そういう事」

「じゃあ俺もお前みたいな魔法が使えるって事か?」

「魔法って……、正式には魔力を使って起こす術が魔法であって、霊力を使って起こす術は……、ってまぁそこはどうでもいいか。とにかく、大きさの大小は別にして、あんたも霊力を持っているけど、それを意図的にどうこうしようってのはまず無理よ」

「何でだよ」

「さっきも言ったでしょ。人間みたいな肉の塊じゃまず肉体が邪魔して霊力の意図的な操作なんて無理なの」

「けどあの二人はその霊力ってやつを使ってんだろ?」

「だからぁ、あれは意図的なものじゃなくて先天的なもので、一種の才能よ。そんなものあんたにはないでしょ」

 人から質問を浴びせられるのが大嫌いだと公言するセセリナだけあってか、はやくも限界は近そうだ。

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