第99話『開拓団』

 季節は冬。一年の終わり。フリア教徒達が懺悔の祈りを天界の神々にささげ、宥恕と慈悲の女神ティアタムに赦しを乞う月『祈月』の十七日。

 フリアでも最も豊かな地『ミドルフリア』、その南方を担う一国『ベルフェン王国』王都フェンの大広場には人だかりが出来ていた。


 場の中央には王城の衛兵達に囲まれた一人の男。

 肥え太ったその体型に似合わず、男の顔はひどくやつれている。

 衛兵の一人が男の横に立ち、観衆の者達に向かって声を張る。

「この男、ロブエル・ローガは内務、財務の大臣という重き職の地位にありながら、王の臣下たる己の身を弁えず、無法の振る舞いを働き続け、国家の安寧と名誉を傷つける一七にも及ぶ罪状があがっている!! 一つ、王族に敬畏する心を欠した不敬の罪。一つ……」

 罪状を次々と人々の前で読み上げる衛兵の声が広場に響き渡る。

 王族や神々に対する不敬、不信の罪から、詐欺、横領、収賄など金に纏わる罪、果ては婦女子に対する暴行、そして戦争犯罪まで。

 列挙される罪の数々。

 衛兵が罪状をあげ終えると、観衆からいくつもの罵声が飛ばされる。

 吊るせ、吊るせ、吊るせ。

 聞こえ、漏れでてくるのは何も罪に対する憎悪だけではない。もっと浅ましき熱を帯びた声を人々があげている。

 彼らは期待しているのだ。

 罪が裁かれる事ではなく、一人の人間の『死』そのものを。

 人が死ぬ、その事実に、その光景に、胸を躍らせ、血を沸かせる人間がここには大勢集まっていたのだ。

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