第69話『蛇』
「そうかい、なら気兼ねする必要もないわな」
まずギルドというものがある。様々な分野において共存共栄を目的とした集まり、冒険、魔術、商業、盗賊から暗殺までその種類は多い。
だが大抵のギルドの活動は一つの分野に限られている。性質上、冒険ならば冒険者が集まり、魔術なら魔術師が集まる。鍛冶ならば鍛冶師が、暗殺なら暗殺者が集まるものなのだ。
しかしアウロボロスはそういった一般的なギルドとは違う。
彼らの活動は分野を問わない。
ギルド『アウロボロス』が欲するは全てであり、一つ。
アウロボロスの目的、それは全てを手にし、一つの真理に達する事。
メダルに描かれた三匹の蛇はその為の手段であり、ギルドメンバー達が望む欲望の象徴。
権、知、富。
各自がそれを望むがままに追い求めれば、やがてギルドとしては一つの真理を得るという考えがあるのだという。
だから彼らは基本自由だ。通常のギルドとは違い、活動の合法、非合法も問わないし、メンバー同士の奪い合い、殺し合いすらも自由。手段を選ばぬ惨忍さから所属する者は『蛇の仔』と呼ばれ恐れられ、嫌う者も多い。
「おいおい、それじゃあ何の得があるんだよ。そんなやばそうな集まりに」
ファバの疑問にボルマンは言う。
「そんな集まりだからこそ、手に入る物もあるのだ。……そうだろ、蛇の仔、レグスよ」
「何が手に入るってんだ」
ファバがレグスの方を見て尋ねる。
「一つ大きな物は『情報』だ。アウロボロスには様々な奴がいる。一国の王から乞食まで、人間ですらない者もいた」
「王様までかよ……」
「そんな集まりだからこそ、表、裏問わず多くの情報がギルドに集まってくる。そしてその情報を、ギルドから与えられた仕事をこなす事で報酬として得られるわけだ。無論、メンバー同士での情報のやりとりも行われているがな、それも基本は等価交換だ」
「なんか、すげぇ話だな」
「ああ。実際謎も多いギルドだ。俺もギルドについて全てを知っているわけではない。俺を含め多くの者達は自身のギルドに所属している者の正式な数もギルドのトップに立つ人間の顔すらも知らないのだ」
「下っ端ってわけだ」
少し馬鹿にしたような言い方だがレグスは気にしない。
「そうだな」
肯定するだけである。
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