第68話
「この程度の雑魚ならば、いくらでも私が相手してやる。だが、ボルマン、あんたの魔術が必要となる場面は必ず出てくる。その時はしっかりと働いてもらうぞ」
「わかっとるよ。もとは一人でもなさねばならぬ旅だったのだ。いざという時はわしの魔術、しかと見せよう」
魔法の種類は無限大にも等しくあるとされている。その全てを知り、操る事など不可能に近く、魔術師と一括りに言ってもどれだけの魔法を扱えるかは個人差も大きい。
ボルマンがどの程度の魔術をどれだけ使うかは、レグスは村を出発する前に本人から聞いている。
彼ほどの剣の使い手が、ボルマンの魔術を必要としている。ボルマンが完全にへぼの魔術師ならば、ありえない話だろう。
「ファバ、オーク共に刺さった矢でまだ使えそうな物は回収しておけ」
「はいはい、わかってますよ」
パピー用の矢は入手出来る場所には限りがあるうえに、代用品を無理に使うと故障のもとになる。ファバも、その事はレグスから説明を受けていたし、戦いの後でも回収出来る物はするように言われていた。
面倒臭そうな顔をしながらオークの頭部に突き刺さった矢を引き抜くファバ。矢には血肉や脳らしき物がべっとりついている。
それを拭き取り、矢入れの皮袋へとしまう。
「なぁレグス、村じゃ結局聞きそびれたけど、蛇の仔っとかアなんちゃらってのは何なんだ。前に言ってたギルドがどうとかってのとは関係あるのかよ。なんかやばそうなもんってのは聞いてて印象あるけどよ」
矢を回収する間の暇を埋める為か、思い出したようにファバがアウロボロスについて尋ねる。
「ほう、小僧の方は何も知らずについてきとるわけかい」
意外そうな顔を浮かべるボルマン。
「ああ、そうだよ。少し前まで、ちんけな盗賊やってただけだからな。レグスについて知らない事ばっかりだぜ」
レグスはもとから己の事を自分から話すような人間ではない。
無学、無知な少年には知らぬ事ばかりだ。レグスについても、世界の事についても。
「そのちんけな盗賊がまた何故、蛇の仔に連れられて旅をしておる」
「別にいいだろ、俺の事は。それより質問に答えてくれよ、その蛇がどうとかってなんなんだよ」
「話してかまわんのか」
ボルマンがレグスの方を見て言う。何か理由があって話をしていないのならボルマンが勝手に喋るわけにはいかない。
だが、レグス反応はあっさりとしたものだった。
「好きにしろ、別に隠してるわけではない。わざわざ話す必要がない、それだけの事だ」
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