第30話

「いいだろう、と言いたいところだがお前が私の望む情報を持っているとは限らないのでな。それでは公平さにかける」

「何が知りたい」

「キングメーカー、かつて狂王が手にしたという石の行方を追っている」

「お前みたいな小僧が今さらなんであんなものを……、何もんだお前」

「私がどこの誰で、どんな理由で石を追っているか、そんな事はお前にとって重要ではないはずだ」

「ちっ、……まぁいい。あの石についての情報なら全くないってわけでもない」

 毒が体を蝕んでいく苦痛に耐えながらダーナンは言った。

「えらく曖昧な返事だな」

「なにせ二十年も昔の話だからな。……聞いておいて損するような情報じゃないとだけ言っておいてやる」

「どこまでも尊大な男だ」

「黙れ小僧……、さぁ情報が欲しいなら薬を先によこしな」

「いいだろう、取引成立だ」

 ダーナンが震える手で男から解毒薬を受け取る。そしてそれを呑み込んだ。

「さぁ、話してもらおうか。石について、お前が知っている限りの全てを」

「まぁ待て……、薬が効いてからだ。……まだ本物かわからねぇ」

 それからしばらく解毒薬の効果がでるまで、二人は時が過ぎるのを待った。

 そして男がその場から動けぬダーナンから離れ、置いていた剣を取り、戻ると、彼は言う。

「さて、もういいだろう。喋ってもらうぞダーナン・バブコック」

 男の手が再び握った黒の剣、その切っ先はダーナンに向けられている。

「ふん、確かに本物みてぇだ。少しは体が楽になってきた」

「一応言っておくが、馬鹿な考えはやめておけ。解毒薬が効いているといってもしばらくは安静にする必要がある。まともに身体が動くようになるのは何日か先の事だ」

「安心しろ小僧、今やるのは俺様も不本意だ。腐ってもユロア人だ、成立した取引は守ってやる」

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