第21話
「仲間じゃない、か。少年よ、一つお前に聞きたい。何故、東黄人であるお前が山猫に加担する。何故、同胞を苦しませるような真似をする」
「同胞だって!?」
怒りを含み少年は言う。
「それがなんだってんだ、ええ!! それが何になるてんだ!! 笑わせんなよ。奴らが俺に何をした!! 何をしてくれたと思ってんだ!!」
憎悪と怒りを含んだ叫びは続く。
「見ろよこの面を」
少年は自分の顔を手にした松明を近付け照らす。
そこにはおぞましいほどに醜い顔があった。
青目人が東黄人の容姿を馬鹿にする事はよくある事だが、同じ東黄人である男から見ても少年の顔はひどく醜いものであった。
それはまるで……。
「ゴブリンか」
それが盗賊団での少年の呼び名だった。
「ああ、そうさ。ここじゃそれが俺の名だ。青目人は俺達東黄人を悪魔の子と呼び忌み嫌う。馬鹿にし見下し、奪い、殺す。けどな……、村じゃ奴らは俺を呪われた子と呼んでいた。お前の言う同胞の俺を!! この醜い面を見て、忌み嫌い、見下した!!」
「復讐か、それがお前が山猫に加担する理由か」
「復讐? くだらねぇ!! 青目人だ、東黄人だ、そんな事はどうでもいいんだよ!! 知ってるか? 青目人も東黄人も笑いながら人間を殴るんだ。醜いってだけで奴らはガキを笑いながら殴れるんだ!! 皮を剥げばどっちも同じくそったれじゃねぇか!!」
「そのくそったれと同じ真似を何故お前もする」
「同じだからだ!! 俺もあんたも、皮を剥げば同じくそったれだ!! どいつもこいつもかわらねぇ!! だから俺は、俺はそのくそどもを利用する!! くそどもにまじってくそどもから奪う、奪って奪って、奪い続ける!! それが生きるって事だろうがよ!!」
まるでこの世の全てを敵にまわし生きんとするような叫びに、男は一瞬自身の過去を見た。
それは深く暗い塔の奥、それは氷のように冷たく清廉な女の顔、それは歪んだ笑みを浮かべる老人、それは憎悪を向ける群衆、そしてそれは炎。
「お前は本当に呪われているのだな」
「……だろうな、皆がそう言ったさ」
「そうではない。今のお前がだ。善悪を失い、世を憎み、まるで世界が敵であるかのように振舞う事しか知らぬ。お前の心の醜悪さこそが、呪われているのだ」
「知ったような口ききやがって、お前だってただの人殺しだろうが!! それがわかったように善人面して説教かよ!!」
「善人ではないさ。ただ、今のお前ほど腐ってはいないつもりだ」
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