第20話

「う、嘘だ!! あんた一人なんてあるはずがない。騙されるもんか。……第一あの化け物はなんだってんだ。あれはあんたの仲間じゃないのか?」

「嘘などではない。あれは私の僕、私にとって手足のようなもの。お前は手と足を仲間内に数えるのか?」

「僕? あんな化け物が?」

「そう、僕だ。お前の言う化け物が私の命令一つで手足のように動くのだ。殺せと命じるだけで、盗賊の屍など無数に築ける」

「嘘だろ……」

「お前にそんな嘘をついて私に何の得がある」

「それは……」

「お前が信じたくないのならば信じなくとも構わない。だがこれだけは言っておく、今日限りで山猫は終わりだ」

「あんたボスまで殺るつもりか? ……無理だね。あの化け物の強さを知らないからそんな事が言える。それに運良くボスのダーナンを殺れたって山猫は終わらない。実際、団をまとめてるのはマッフェムのじじいだ。他に雑魚何人殺したって意味なんてないぜ、残念だったな」

「そのじじいならもうとっくにくたばっている」

「なんだって!?」

「私が殺してきたばかりだ」

「……はったりだ」

「金貨三枚の模様を刻み込んだ弓だったな、奴の得物は」

 少年は驚愕した、男の言う事が事実であったからだ。

「嘘だろ、あんた本当に……」

「鱗の欠けた蛇、翼の欠けた竜。バウアー兄弟が手にしていた剣につけられた模様だ」

「あいつらまで!?」

「仲間の死を信じたくないかもしれんが、それが事実だ」

「仲間? 仲間だって!! あんな奴ら仲間なんかじゃねぇよ!!」

 男の『仲間』という言葉に強く反発する少年。

「お前も盗賊団の一員だろう」

「だが、仲間なんかじゃねぇ!! 利用してやってんだ!! 俺が、俺が利用してやるんだよ!!」

 願望が混ざった虚しい言葉に、少年の盗賊団内での境遇がうかがえる。

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