第19話『出会い』
囚われの女達が残る地下を除けば、誰もいないはずの砦。だが、男が一階に着き外へ出ようとした時、何者かの気配がした。
その気配はゆっくりとではあるがこちらに近付いてくる。
男は物陰に潜み、様子をうかがう。
――子供?
そこには怯えながら周囲を警戒し歩く少年の姿があった。
手に持った松明で行く道を照らしながら、もう一方の手にはしっかりと短剣が握られている。
――しかも東黄人、あれが例の子供か。
青目人で構成された盗賊団に東黄人の少年が一人紛れているという話が、盗賊を尋問し聞きだした情報の中にあった事を男は思い出す。
話によれば、首領であるダーナンや盗賊の古株達だけでなく新米連中にまで奴隷、玩具の如くひどい扱いを受けているそうだが、これが事実ならば、少年がダーナンの今の居場所を知っている可能性がある。
「どこへ行くつもりだ少年」
子供の周囲に他の気配がない事を確認して男は彼の前の姿を現す。
「な、なんだお前!!」
闇の中から急に出現した男に少年は驚き、警戒の眼差しを向けながら手にした短剣を構えた。
「やめておけ、震えたその手で何を斬るつもりでいる。……私がその気になればお前を殺すのに瞬きする間も必要ないだろう」
男の脅しに、ごくりと息をのみ込む少年。恐怖と葛藤しながら彼は尋ねた。
「あ、あ、あんたが犯人なのか?」
「一体何の」
「とぼけんな!! この砦を、あいつらを殺した奴かって聞いてんだ」
言葉が整理されていないのは恐怖感のせいか、それとも盗賊にありがちな育ちの悪さのせいか。
この場合は両方であろう。
「落ち着け、私はお前と少し話がしたいだけだ。お前が私に危害を加えないのなら私もお前には手を出さない。さぁ、まずはお前の話を聞こう。ゆっくりでいい、落ち着いて話す事だ」
少年の言いたい事など既に理解していたが、少年の興奮状態を冷ませようと男は試みる。
「だ、だから……」
興奮で荒くなった息遣いを、無理矢理静めながら少年は言う。
「お、俺達を、ドルバンの山猫を襲ったのはあんた達なのか?」
少年の問いに男は素直に答える。
「ああ、そうだ。だが正確には達ではない、私一人だ。今夜、山猫を襲ったのは私だけだ」
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