第18話

 決着は一瞬だった。

 ほとんど同時に二人は動き、片方がその場に倒れた。

「あ、こ、こん……」

 何か言おうとしながらも、その途中で倒れた方は息絶える。彼の胸には深々と鋭利な短剣が突き刺さっていた。

「やはり腐らせていたな。戦争で身を削りながら戦っていた頃のお前ならば、このようなつまらない油断などしなかっただろう」

 勝ったのはマッフェムではなく侵入者である東黄人の男だった。

 二人の勝敗を分けたのは使用した武器の違いもあるが、結局はマッフェムの慢心にある。

 剣で斬りかかるのでなく、短剣を急所に投げる事によってマッフェムが前提としていた間合いの概念を崩した男も確かに見事であるが、侵入者の武器を目につく剣と決めつけ、ローブの内に隠し持った短剣の存在を失念していたマッフェムの失態が無ければ結果が変わっていてもおかしくない。

 それほどの僅差であった。

 実際、驚くべき事にこの瞬時の間に、マッフェムの弓からは矢が放たれていた。

 何の考えもなしにマッフェムに斬りかかっていたのなら、結果は変わっていただろう。

――残るは……。

 もうだいぶ盗賊達の数も減ってきた。

 最初の喧騒が嘘のように今や砦内は静まり返っており、外に逃げ出した者達がいくらか生き残っているだけである。

 ドルバンの山猫の首領ダーナンの姿もきっとそこにあるはずに違いない。

 男は砦内を駆け降り外へと向かう。

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