第17話

 盗賊達が主に活動するザナール国周辺で普段生息が確認されている魔物の種類は多くはない。人間社会にとってある程度の脅威となるような存在に限れば数えるほどと言っていいだろう。

 このような傾向にあるのは何もザナール国だけでなくフリア地方全体、そしてその隣域の大国、ユロア大連邦の広大な領土においても同じであった。

 男が従えるような恐ろしく危険な怪物はそれこそ人の文明の力が及びきらぬグレイランドか、あるいはもっと禍々しい何かによってもたらされたとしか考えられない。

 狂王ヌエが邪悪な魔導師達と結託し操った魔物達。マッフェムが目にした魔草の凶悪さはあの頃の記憶をよみがえさせるに十分であった。

「そんな事を知ってどうする」

「ただの好奇心さ。貧弱な東黄人は自分の力じゃ何も出来ないから、悪魔と取引をして化け物を戦わせるのかね? いったいどうすれば、こんな化け物を操れる、教えてくれよ」

「お前のくだらない好奇心を満たしてやってもいいがその前に、私も聞いておきたい事がある。キングメーカーという石を探している。石について何か聞いた事はないか?」

「くっくっく、今度はあの呪われた石か。……まるで過去に時間が戻っちまったみてぇだな。俺は夢でも見てるのか?」

「老いてボケるにはまだ早いぞマッフェム。私の質問に答えろ」

「おいおい、そりゃないだろ若造。礼儀ってもんを知らないのか? 俺の質問が先だろ」

「私の質問が先だ。お前から石の情報を得られるとは期待できないのでな」

「くっくっく、そりゃ違いねぇな。俺はあんな石に興味ないんでね。残念だが何も知らんぞ。人並みの噂話以外はな」

「では取引不成立だ」

「だな」

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