第13話

「あんた、あんな石が本当にあると思ってんのか……」

「言葉をよく選べと言ったはずだが。……理解出来んかったようだな」

「待て!! わかった!! 石だろ!! キングメーカー、さっきも言ったが当時は大勢の人間がその行方を追っていた。結局、誰も手に出来ず、その存在すらも疑われたがな。だが重要なのは胡散臭い石に何故そこまでみんなが必死になってたかって事だ。石を手にした野郎を王にしてくれる、そんな馬鹿げた話を真面目に信じたのには理由がある。五大国さ。五大国はみなそれぞれあの石を持っているとされている。もちろん誰かが見たわけじゃない。だがもう何千年もそうであると言われてきた。石は一つじゃない。あんたの狙いがキングメーカーだってんなら、何も狂王の石に拘る必要はないだろ。五大国で探る方がよっぽどの近道さ。なっ、そうだろ?」

 『五大国』とはカンヴァス大陸に遥か古の時代より君臨する五ヵ国、ユロア大連邦、バルシア大王国、エジア大王国、ジリカ大王国、バトゥーダ大王国の事をさしている。

 彼の国々の始まりからにして、そもそもがキングメーカー、選王石を手にした五人の者達によってなされたとされており、狂王が手にしたという石を大勢が追い求めたのも、その伝説があったからこそとも言える。

 無論、五大国がそれぞれ保管しているという石の姿を見たものはほとんど存在しない。大国に君臨する『大王』のみが目にする事を許されるとされており、その存在を疑う者がいないわけでもない。

 だが、石の力によって築かれたとされる五大国の領土は広大で、魔物が蔓延るグレイランドを除けば、カンヴァスの地のほとんどは五大国によって支配されている。その影響力の高さを見れば、野心ある者の誰もが石を欲しても不思議ではない。

 事実、狂王の石の噂にフリアに暮らす者のみならず、わざわざ遠方の地から石を求めこの地を訪れた者が多くいたのだ。

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