第9話

「お前ら!! こいつは俺達二人でやる、手をだすなよ!!」

 盗賊が咆える。

「ローガス!! やるぞ!!」

「おうよ!!」

 バウアー兄弟、その背丈の小さい方が最初に襲い掛かった。

 彼は男に素早く一太刀浴びせると、そのまま軽快な身のこなしで標的の背後へと廻る。攻撃こそ剣で受け流されたが、ローガスと呼ばれたのっぽと標的を挟み撃ちにする形となった。

「ローガス、間違って殺っちまうなよ。こいつとはたっぷりお話しないといけないんだからな」

 チビの方の言葉に、ローガスはにやつき答える。

「わかってるよ兄貴。へへ、へへへ」

 どうやら背の高いローガスがバウアー兄弟の弟らしい。それは盗賊から聞き出した情報通りであった。

 ローガスはゆっくりと距離を詰め、やがて剣の間合いに入った事を確認すると、手にした長剣を振り回し攻撃し始める。

 それは一見乱雑な振りであるが、実は隙がない。

 いや、正確に言うならば隙はある。だがその隙を背後にいる男が消していた。

「ディリータ、お前は見てるだけか?」

 侵入者である男がバウアーの兄の方に問う。

「ほう、俺の名を知ってるのか」

「部下達が言っていたぞ。弟の影でこそこそ戦うのが得意なハイエナみたいな野郎だと」

「安い挑発だな、小僧。……だが、いいぜ乗ってやろう。後悔するなよ」

 ディリータ・バウアーとローガス・バウアー、その二人が同時に斬りかかる。

 大振りのローガス、その一撃一撃が長く、重い。

 それを掻い潜るようにして標的の懐に上手く潜り込むディリータ。軽やかに素早く、必殺の一撃が放たれる。

 剣と剣がぶつかりけたたましく音がなる。そして地下牢に囚われた女達がその音に悲鳴をあげる。

「やるじゃねぇか!! 小僧!!」

 ディリータが叫ぶ。

 凡人には見切れぬぎりぎりのところで男は二人の盗賊の攻撃を受け止め、かわし続けた。

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