第8話

――こいつらがバウアーか。

 盗賊共が一目置く剣の使い手達。兄弟という事らしいが、見れば確かに男二人の背丈は違えど顔立ちは似ていた。

「お前達に尋ねておきたい事がある」

 侵入者である方の男は堂々たる口調でそう切り出す。

「キングメーカーと呼ばれる石を私は探している。噂の一つや二つ聞いていないか」

 男の問いにバウアー兄弟はげらげらと笑いだし、馬鹿にした口調で答えた。

「また何を言い出すかと思えば石ころ探しだって!? キングメーカーか、これはまた久しぶりに聞く名だ」

「知っているのか」

「お前のようなガキが赤ん坊の頃か、いや生まれる前か?」

 松明の明かりに照らされた侵入者の顔をまじまじと見ながら盗賊は言葉を続ける。

「くくっ、アンヘイの猿共を殺し回ったあの戦争じゃあ、石の噂はよく聞いた。戦争が終わる頃にも、やれどこぞの貴族が手に入れただなんだとくだらない噂に事欠かなかったぜ」

「結局お前は何も知らないという事か」

「くく、ハハ、クハハ。……知らないも何も全部デマさ。小僧、そんな石ありゃしねぇ」

「どんな鼠が忍び込んだかと思えば、今時あの石を探してる気狂いだったとは傑作だ」

「まぁ、そんな馬鹿じゃなきゃあ俺達の砦に忍び込んだりしねぇさ。まさか憐れな同胞の為に石で国作りしようってんじゃないだろうな!!」

 バウアー兄弟、その手下達が下品に笑う。

「じゃあ俺からも質問しとこうか。小僧、仲間は何人いる?」

 盗賊達もこの襲撃がまさか目の前の男一人が起こした事態とは思いもしないらしい。

「そんなものは存在しない」

「おいおい、そりゃないだろ。俺はお前の質問に真面目に答えてやったぜ。つまらねぇ冗談は好かねぇな」

「嘘ではない。私もつまらない冗談と、盗賊の小汚い面は好きじゃない」

 盗賊達の顔付きが変わる。

「そうか。それなら仕方がねぇ。……楽には死なさねぇ。てめぇからこんなふざけた真似しやがった奴らの事吐かせるだけ吐かして、殺してくださいと懇願するまで地獄を見せてやる!!」

「やってみろ下郎」

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