『テストーレ・モデル』

そのとき

金色に輝くスチール線が

左の小指の爪の端を

弾き飛ばしたんだ


少し下がったEが

思いがけず大きな音で鳴った


今まで奏でてきた

どの音 どの音よりも

力強くて

哀愁を帯びていた


どのくらい?


穏やかなストリームを描いていた

曲を一撃で終わらせ

わたしが呆然と

ボウを取り落とすくらいさ


もう何年も経つけれど

未だにわたしは

あの時のスチール線に

小指を絡めとられている



わたしの満たされない心の隙間の

ひとかけらは


間違いなく


あの時の小指の爪

少し下がったEだ


ああ 間違いない

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