『ある友に心から捧ぐ歌』
君は虚を抱いていた そんなこと
最初からわかっていたよ
だからこそ私は
いろんなモノを投げ込んだんだ
孤独に潰されそうな時
たくさん四方山話をしたね
素直な気持ちを伝えて
ケンカもした
バカな笑い話をしたり
互いの激情に三歩下がったり
一緒にクラシックを聴いたり
哲学について語ったりもした
懐かしいと言うには苦すぎる
あの日々は
君の劇烈な重力の中で
どうなってしまったかな
もう跡形もなく粉砕されたかな
「ありがとう」という
君の晴れやかな顔を信じた
心の迷路を彷徨っていた君と
一緒に考えていた
――つもりだった
久しぶりに会った君は
ブラックホールだった
もはや昔の
優しく歪んだ恒星じゃなかった
これから君は
自分のカケラを吸い込み続け
周りの星々をも吸い込み続け
暗黒の虚空に変えてしまって
それから 泣くのかな
それとも 怒るのかな
今 私という彗星が去り
長い時が経てば いつか
底無しの宇宙の深穴から
君の片目が覗くのだろう
その日
もし
私が
君の重力圏ギリギリに
佇んでいたとしたら
私は君にとって久しぶりの
光源になってしまうのだろうか
それが 君が選んだ「神」の
恵み賜うた「幸せ」なんだろうか
こたえられない私を
許してほしい
この永い訣れを告げることを
どうか
許してほしい
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