第3話 エルフさん、お父さんはいますか?
アレク君が強く決意を固めてから、2カ月が過ぎました。
アレク君(8才)は、エルフさんは一体、何才なのか、それを知るための方法を必死で探しました。
そして、あることを思いつきました。
エルフさんに直接聞くのがだめなら、エルフさんのお父さんに聞けばいいんじゃないのかな?
アレク君は、王宮学者であるお父さんと、よく一緒に出かけます。
出かける場所は、誰かのパーティーだったり、図書館だったり、いろいろです。
そして、必ずお父さんのお友達に会って、うちのアレクも10才になりまして、と紹介されるのです。
アレク君は、それと同じことをエルフさんにもしてもらおうと思いました。
エルフさんの、お父さん、それか、お母さんを紹介してもらえばいいのです。
アレク君は、街中で弓を背負った格好いい男のエルフの人に声をかけました。
アレク君は、挨拶がキチンとできて身なりも良いので、人見知りをしない子なのです。
弓矢を背負った格好いい人は、レゴラなんとかという名前の人でした。
アレク君は、思い切って聞いてみました。
「ええと・・・レゴラ・・さん?お父さんはいますか?」
レゴラさんは見た目が格好いいだけでなく、優しい人ですから、少年に教えてあげました。
「ええ。私のお父さんは、元気にしていますよ」
それを聞いて、アレク君はホッとしました。エルフさんは全員がすごく年上だと聞いていたので、お父さんもずっと前にいなくなっていたらどうしよう、と思っていたからです。
「よかった。もしよろしければ、お父さんを紹介していただけませんか?」
アレク君は育ちが良いので、きちんと敬語で喋ることができました。
レゴラさんは、礼儀正しい少年に笑顔になりながら答えました。
「ちょっと難しいかなあ。私の父は、遠い遠い、本当に遠いところにいるんだよ」
「そうですか・・・」
アレク君はガッカリしました。そうでした。お父さんが言っていました。
エルフは、大陸中に散らばって住んでいる、と。
エルフさんの年齢を聞くのに、お父さんやお母さんから聞く、という方法は使えなさそうです。
すっかりしょげてしまったアレク君を見て、優しいレゴラさんは気になったのでしょう。アレク君の相談に乗ってくれる、と言ってくれました。
アレク君は迷いました。本当は、エルフさんは何才ですか?と聞きたいのです。
でも、以前、結婚しようと思った女のエルフさんに魔法でノックアウトされて以来、年齢を聞くとエルフさんは、とても怒る、と思っていたからです。
そこで、アレク君は考え方を変えました。お父さんがダメなら、お爺ちゃんのことを聞けばいい。そうしてどんどんと神々の時代までさかのぼることができれば、エルフさんの年を、だいたい予想できるじゃないか!
アレク君は、自分をてんさいだと思いました。
アレク君は、レゴラさんに尋ねました。
「エルフの伝承について教えてください。神々から、レゴラさんまでのエルフの繋がりを教えてください」
レゴラさんは、とても驚きました。こんな少年が、エルフの伝承に興味を持つというのですから。
エルフの伝承は、本当の秘儀で結婚式の時にお互いの血筋と伝承を謡い、称え合うものなのです。
「君は本当に賢い少年だね。わかった。それでは次の月夜に教えよう。そして次の月夜まで謡い続けよう。」
「え?なんですって?」
アレク君は、何か聞き間違えたようです。月夜から月夜まで謡い続けるって?
「そうですよ。エルフの伝承は神々の時代よりの誇り高き連なりの歌です。それは神々の誕生から始まり、一族の歴史まで月が一巡りする間の血のつながりを謡うのですよ」
つまり、2週間ぶっ続けで歌うというのです。
「すっすみません!軽々しく聞いてごめんなさい!」
アレク君は謝って逃げ出しました。
さすがエルフ。人間とは時間感覚がまるで違います。
この方法は、ダメそうです。
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