第11話SciFiが描いていないことがら 1

 ビジュアルとしてですが、SciFiが描くべき残されていることがらは、沢山あると思います。

 今回は、よく使われるものであるにもかかわらず、人間はまだその描き方を知らないのであろうことについて書きます。

 結論から済ませてしまえば、それは「サイバー・スペース」です。私の知らないところで既にあるのかもしれませんが。


 古くは、サイバー・スペースはダンジョンでした。まさにダンジョン然としたダンジョンでした。TRPGにおいてはなおさらその傾向が強く、ダンジョン以外の何者でもなく、セキュリティーはモンスターであったりもしました。


 昨今のVRMMOものでは、どうでしょうか。オープンフィールドになっており、それゆえにダンジョンからは抜け出していると言えるのでしょうか。

 そういう意見もあるかと思いますが、私は、未だにダンジョンであると考えています。

 というのも、結局はX, Y, Zの三次元とか、惑星規模のVRMMOの世界だったら極座標だったりするかもしれませんが、ともかく三次元の座標に支配された空間だからです。

 では、ポータルのようなものがあればいいのでしょうか。それはWWWのリンクによるジャンプを持ち込んだに過ぎません。三次元の空間にポータルがあるのみであり、ダンジョンからはやはり逃れていません。


 ちょっと変な例かもしれませんが、ハイパーキューブというものがあります。これについて説明してみます。

 四次元のハイパーキューブを一気に考えてみましょう。三次元のハイパーキューブの頂点はこのようなものでした。[0, 0, 0]、 [1, 0, 0]、 [0, 1, 0]、 [1, 1, 0]と、 [0, 0, 1]、 [1, 0, 1]、 [0, 1, 1]、 [1, 1, 1]。これの最後に新しい軸を付け加え、それに 0 と 1 を与えると、こうなります。[0, 0, 0, 0]、 [1, 0, 0, 0]、 [0, 1, 0, 0]、 [1, 1, 0, 0]と、 [0, 0, 1, 0]、 [1, 0, 1, 0]、 [0, 1, 1, 0]、 [1, 1, 1, 0]、それに加えて[0, 0, 0, 1]、 [1, 0, 0, 1]、 [0, 1, 0, 1]、 [1, 1, 0, 1]と、 [0, 0, 1, 1]、 [1, 0, 1, 1]、 [0, 1, 1, 1]、 [1, 1, 1, 1]となります。

 四次元のハイパーキューブまでの図示は簡単で、読むのも簡単です。大まかにどんな図になるかを説明すると、見た目は、大きな立方体の中に小さい立方体があるようなものになります。四次元めの座標は、三次元に制限を受けないので、[0] だから左寄りだとか下寄りだとか、[1] だから右寄りだとか上寄りだとかは気にしなくてかまいません。ともかく [0, 0, 0, 0] と [0, 0, 0, 1] が同じ場所を占めないように書けばいいだけです。

 ただ、この図について注意しておくと、内側にあるように見える立方体も、四次元では外側に見えているということです。

 五次元以上についても同じように頂点を求めてやることだけなら簡単です。ですが、それを図示しようとしたり、図を読もうとすると、結構無理が入ります。


 長々と書きましたが、四次元のハイパーキューブには超平面として三次元のキューブが含まれます。では三次元のキューブから、外側や隣の超平面としての三次元のキューブを見るとどう見えるのでしょうか。並んだ立方体の積み木の中から、隣りに置かれた積み木の中を見るようなものでしょうか。もしそうだとしたら、それは全体としては立方体ではなくなっているものの、三次元の中に存在しているただの直方体ということになります。ならば、それは四次元のハイパーキューブではありえないということになります。


 サイバースペースを四次元のハイパーキューブとして描くべきだと言っているわけではありません。ですが、その四次元のハイパーキューブも、中から見た時にはどのように描けばいいのかはわかりません。図示だけなら簡単なのですが。

 同じようにと言っていいと思いますが、人間はまだサイバースペースの描き方を知らないのだろうと思います。

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