第21話 勇者、訓練する

屋敷前でアッシュがぼろぼろになっていた次の日になった。

あれ以降もそれとなくアッシュに、何かあったのかという感じのことを聞いていたが、一切話すことはなかった。

ただ……


「ふむ、反省は十分みたいですね」


その状態のアッシュを見た、魔王の母はにっこり笑顔でアッシュを見ていた。

私はその時、やっぱり魔王の母は敵に回さない方がいいなと思った。

その日はアッシュも私達と一緒にご飯を食べた。

で、今だが……


「ふぅ……久々に動いたな。この体になってから戦闘、一切してないからななぁ。」

「なるほどな、てことは筋力は落ちているが基本的なステータスは変わっていないということだな。」


久々に運動をしていた。

その運動は、まぁ……所謂、戦闘訓練なのだけども

で、今戦闘訓練をしている場所だが、魔王の母から借りた……いや、魔王の母が作り出した、一種のコロシアムだった。


「それにしても、あの人……すげぇなぁこんなものまで作り出すとは……」

「そうだねぇ。創造魔法なんて、古代の古代の魔法だよ……」

「そうなのか?で、その創造魔法ってのはなんだ?」


アッシュとミーナが会話をしている中、アッシュはミーナに創造魔法のことについて聞いていた。

それに対し、ミーナは創造魔法のことについて語りだした。


「創造魔法はね……一言で言うと、無から有を生み出す魔法だね。といっても、生み出せるものは自分が知っているもののみだね。」

「ふむ……」

「で、作るものの大きさや質量に比例して消費量が増えるんだよね」

「なるほど……といことはこの大きさということはそれなり魔力を消費しているというわけか」

「うん……ただね、このコロシアムと同時にあの人、これを納めるために空間魔法まで使ってたんだよね……」

「え……!?」


私もその二人の会話を聞きながら驚いていた。

だって、さっきのミーナの言葉を本当とするならばだ……魔王の母は尋常なほどに魔力を使っているからだ。


「……まじか。」

「うん、私もその場で見せてもらったからね……ただただ魔力の量がすごかった。」

「そうかぁ……ということはあれでも序の口だったのか」

「何か言った?」

「……い、いや」

「そう、じゃココらへんで休憩は終わり!」


ミーナはそう宣言して会話をやめた。


□□□


「じゃぁ、やるぞ!」


そう言って、アッシュは私に襲い掛かってきた。

アッシュはまず、手に持っている非殺傷武器を振り下ろしてきた。

私はその振り下ろされた武器を受け止めるように、自分が持っている武器でガードした。


「ぐっ……」

「ふむ、やっぱり筋力が下がっている分力が下がっているか。」


アッシュが言ったとおり、私の筋力が落ちているためかアッシュの攻撃を受け、後退した。

だが、私もそれに負けじとその武器を弾き攻撃に移った。


「でやぁっ!」

「くっ、でも速さは変わらずか。」


私の攻撃はアッシュに当たりそうになるがそれをアッシュは剣でガードした。

私はその後も攻撃されないように続けて攻撃に移った。


「うーん、こういうのはどうだ」

「殺傷力無いとは言え、それをまともに受ければ無くても変わらないっての」


私はそう言って、剣に自身の魔力を通し、アッシュに攻撃した。

アッシュは私がそれをするの見て、すぐに回避の体勢に入り、私の攻撃を避けた。

それから、私達は疲れるまで武器で打ち合った。


□□□


「ふぅ……ふぅ……」


あれから、私達は休憩も忘れて数時間の間打ち合っていた。


「はぁ……はぁ……むきになりすぎた」

「あぁ……」


お互いにヒートアップしていき、休むと言うことさえ忘れていたからだ。

そして、そのコロシアムでお互いばったりと倒れていた。


「はい、ウォーターっと、あ、薫はこれね。」

「うわっぷ!?」

「あぁ、ありがとう」


その倒れているところにミーナは魔法で水をぶっ掛けてきた。

ただ、それはアッシュにだけだった。

私には普通に水を渡してくれた。


「おい、ミーナ。やめろよ」

「いいじゃない、死ぬわけじゃないし」

「……はぁ、まぁいい。それで、俺達どれぐらい打ち合ってたんだ?」

「そうね……2~3時間ってところかな」

「結構、打ち合ってたのか」

「まぁね、じゃぁ、そろそろあの人がここから出てって言ってたからでるよ」


ミーナはそう言って、コロシアムの外へ続く扉の方へと歩いていった。


「まぁ、そうだな。それに今の薫の能力も分かったしな」

「あぁ、私自身の今の力量もよかった。」


私達はそう言って、ミーナの後を追っていった。


□□□


ところで余談によるが、ラーサはこのコロシアムには一切来ていない。

なぜなら、魔王の母に連れられて、どこかへ行ったからだ。

なぜ連れて行くのかを聞いたけれど、魔王の母はそれを答えることは無かった。

でも、特に悪いことではないと言っていた。

だから、まぁ、どうということはないのであった。

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