第14話 勇者、ショッピング?

Side:アッシュ


「だぁ……迷路を抜けたのはいいが、今度はなんだよここは」


俺はまだ、迷っていた。

迷路を抜けたのはいいが……屋敷とは真逆の方向に抜けていた。

そして、俺がいたのは……何かだだっ広い戦闘場のような場所であった。

しかし、俺が迷路を迷っていたときも周りを見ていたがこんな広い場所はなかったはずだった。


「……それにしても、おかしいだろうここ元々なかったはずだぞ」


俺はそう呟くと……その場所の奥から一匹の妖精が俺のほうへとふよふよと近寄ってきた。


「キャハハ、ようこそ私の場所へ。私はバトロここの妖精だよ。それじゃ、主様に言われてる通り、戦ってもらうよぉ!」


そう言って、その妖精は一体の魔物を放ってきた。


「げっ……ミノタウロスかよ」

「キャハハ、がんばってねー」


妖精は魔物を出すだけだし、奥へと消えていった。


「あぁ……もう、なるようになれだ!」


俺は勢いをこめてミノタウロスへ走り出した。


☆☆☆Side:薫


「さて、アッシュも全然来ないし……アッシュは置いていきますか。」

「そだねー……」

「まぁ、しかたあるまい、これ以上待っても無意味に時間を浪費するだけだからな。」


私はアッシュを置いて、この町の案内を開始することにした。


「今回案内するのは一般的な服屋とか日用品とかがある場所だな。」

「魔族の日用品とかすごく気になってたんだぁ、特に魔王の母が使ってたあれすっごく気になる。」

「あぁ……あの、化粧品かな」

「そう、それ!」

「ふむ、確かに私も気になっていたな。」


そして案内がてら、私達は普通に女子トークで会話を咲かせていた。

さすがに慣れすぎていて私自身違和感はすでに無くなっていた。


「っと……とりあえず一軒目についたぞ。」

「おぉ、ここかぁ……王都に限らずこっちもすごい種類の服あるなぁ」

「ほぉ……」


そして、会話をしながら歩いていると、第一の目的地についていた。


「さぁ、て何があるかなぁ……!」


ミーナは期待に胸を膨らませながらその服屋へと入って行った。

私達はその後を追いゆっくりと入っていた。


□□□


「ほぉほぉ……これにそれにあれに……何かいろいろ滾ってきた!」


ミーナは服を見ながら、興奮していた。

どうやら、ミーナの嗜好に合う服が多いようだった。


「ほぉ、ふむ……この質感そして、色といい……鎧の下に着るには不具合が無いな……ふむ」


ラーサは鎧の下に着る服を見定めていた。

そして、ラーサの眼に適ったものをかごに積んでいた。

で、私はというと……


「あっ、薫様……これなんてどうです?」

「いえ、こちらのほうが似合うでしょう。」

「いえいえ、こっちですよ。」

「ちょっと待って……私を着せ替え人形にするのはやめて!」

「「「いやです!」」」

「……あぁ、そう」


ここの店員にあれやこれやと着せ替えられていた。

実際この店は……魔王の母が副業でやっている店なのだ。

そして、ここの従業員は魔王の母の直属の部下でもある。

ちなみに、ここの一部の私を着せ変えない店員が、私に話してくれたのだが、今日魔王の母から私を一番綺麗に輝かせたものには褒美を与えるとか何とか言われているらしい。

普通に、はた迷惑な話であった。


「よし、できましたわ!」

「くっ……私が選んだのより輝いている」

「さすがチーフですね……」

「あはは……」


そして、数刻立ち私は立派に着せ替えられていた。

上から下まで真っ黒なゴシックドレスに……

そのタイミングで、ミーナ達は戻ってきていた。


「……おぉ、いいねぇ。前見たゴシックドレスもよかったけど今回のも中々……可愛くなりよってからに……フフフ」

「……ほぉ、中々」

「……そうか、それとミーナ怖いからその顔はやめろ」

「んっ、あごめんごめん」


ミーナからは不穏な感じはしたが抑えてくれた。

そして、ミーナ達は手に持った服を買っていった。

ミーナ達が買った後に私にこれを着させたチーフはこう言った。


「それでは、このゴシックドレスはオマケですので着て帰ってくださいね?私が褒美もらえませんので」

「あ、はい」


有無も言わさない笑顔で言われた……


私達はその服屋を後にし、次なる目的地へと歩いていった。


□□□


それからの私達はいろいろな日用品の店を歩いて回っていった。

ミーナが特に暴走していた。けれど、いつものことだったので割合する。

そして、私達は屋敷へと帰る道を歩いていた。


「うーん、買った買った。」

「うむ、兵士にもいい土産が出来たな」

「それはよかったよ」


私達は他愛も無い会話を交わしながら歩いていた。


「それにしても、結局アッシュはこなかったね」

「あぁ……一体どうしたのだろうな」

「……まぁ、帰ったら分かるんじゃないかな。」

「それもそうだな」


アッシュの話題になり、私達はいろいろと語った。だが、結論的に屋敷に帰れば分かるかとなり、簡単に流していた。


そして、私達は屋敷にたどり着いた。

ただ、屋敷の扉の前で……


「だぁ……やっと戻ってこれたぁ……」


ぼろぼろになったアッシュが倒れていた。


「アッシュ……どうしたんだ」

「んっ……あぁ、薫達か……いろいろとあった……」

「そ、そっか」

「あぁ……聞くな」


アッシュはそれきり話さなくなった。


「まぁいい、連れてはいるか」


ラーサはアッシュを肩で支え立たせ、そのまま屋敷の中へと入って行った。

私達もそれを追うように入って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る