第11話 勇者、とりあえず安堵する
私はアッシュ達を部屋に案内し終えると、自分の部屋へと戻っていた。
「ふぅ……なんとか、正体明かせたかな……」
私は一人、さっきまでのことを思い返していた。
正体を明かしたときはどうなるかと思ったが、何も起こることはなかった。そのことに安堵していた。
ミーナという実例があっても、ミーナはミーナで何を思っているのか分からない時があるから、不安ではあった。
「まっ……驚きすぎていたというのは感じたけどなぁ……許容範囲内だね……」
そして、私は明日のことを考えていた。
明日は、今日あの青年を城へ送ったことにより案内できなかった場所を案内しようかなと考えていた。
いろいろと案内できる場所はまだまだたくさんあるからね……
「明日はあのあたりを案内しようかな。うん……」
私は明日の案内する場所を決め、着替えることにした。
現在の私の服装は勇者として旅をしていたときの服装のため寝るためには不十分だからだ。
私は、この部屋にはある白く大きい箪笥の前へ行き、それの三段目の引き出しを開けた。
「……うーん、慣れすぎてるなぁ。まぁ……しょうがないか」
私はそんなことを呟きながら、その引き出しの中に入っている、魔王の母に私用と言われ、渡された、真っ赤なネグリジェを取り出した。
私は一度二度と思考したが、結局……
「……着るか。」
着ることにした。
私は、まず複雑なこの服を一枚ずつ脱いでいき下着にまでなったその時のことだった。
私の部屋の扉が突然開いた。
「はぁ……迷った、ここだったけ……あっ」
「あっ……」
アッシュが私の部屋へと入ってきた。
「……で……でてけぇぇぇぇぇ!!!」
私は大声で叫びながら手元にあった物をアッシュに向けて投げていた。
「す……すまん!すぐにで……」
アッシュは謝りながら、部屋から出て行こうと後ろを向き硬直した。
なぜなら、私が大声を出したせいなのか魔王の母がアッシュの後ろに立っていたからだ。
「あらあら……覗き?」
その魔王の母は微笑みながらアッシュを見ていた。
「い、いえ……」
アッシュが何かを言おうとしても、魔王の母は有無を言わさない微笑でアッシュをずっと見ていた。
「そう?……なら、いいんだけど女性の部屋にノックもせずに入るのは男としてどうなのかしら?」
「そ、そうですね…」
そして、フフフと微笑みながらアッシュを責めていた。
私はこの隙にと思い、いまだ下着姿のままから、ネグリジェを着た状態になった。
「それにぃ……薫さんもよ」
「はい!?」
ネグリジェに着替え気が緩んだところに魔王の母はいきなり私に話しかけてきた。
「貴方も、女性なんだから着替える時ぐらい部屋の鍵はしっかりと施錠しなさいね。」
「は、はい」
「まぁ、薫さんが分かったのならいいわ、さて……アッシュさん行きましょうか?」
「へっ?……ど、どこにですか?」
「ひ・み・つ」
そう言った、魔王の母はそれはもう……怖かった。
アッシュはこちらをチラッと見たが、私は顔をそらした。
だって、かかわりたくないと思ってしまったからだ。
そして、アッシュはそのまま魔王の母に引きずられどこかへと連れ去られて行った。
□□□
「……生きてるかな」
私は魔王の母に連れて行かれたアッシュのことを考えていた。
「ま、まぁ大丈夫だろう」
けれど、すぐに考えるのをやめた。考えるのがちょっと怖くなったからだ。
「さて……寝よう、うん寝よう……」
そして、寝た。
□□□
次の日の朝になった。
私の部屋から見える朝日によって目が覚めた。
昨日の夜のことなんて覚えてないかのように……
「ふぁぁぁ……いい天気だなぁ」
私はその窓から見える外を見た。
それはもう、いい天気であった。
「さて、リビングに行こうかな、ミーナ達もいることだろうし。」
そして、私は自室から出て、リビングへ歩いていった。
ただ……この時、自分が着替えてないことに気がついたのは大分後のことだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます