第10話 兵士、自分の気持ち

……私達が薫の今の住んでいる場所へ案内され、そして、この場所に泊まる事になった。

その際、薫から部屋に案内された。

そして、ミーナに連れられ与えられた部屋に入った。

だが私はこの時まだ、薫が女性になったということの驚きを隠せていなかった。しかも、普通に会話をして私達を案内していたカールさんだったと言うことに。

それに……この胸の奥から来る気持ちはなんなのだろうか私には分からなかった。


「さて、ラーサどっち使う?」


そんな私を気を使ってなのか、いつも通りなのかよく分からない調子でミーナは私に聞いてきた。


「なにがどっちを使うなんだ?」

「これ」


私はなにがどっちを使うのかと意味が分からなかったのミーナに聞くとミーナは二つあるベッドを指差した。


「ベッドか……私はどっちでもいい」

「そう?じゃぁ私は右ね」

「あぁ……」


私がそう言うと、ミーナは右を選び、そのベッドへと腰を掛けた。


「うん、なかなかいいベッドだ」

「そう……か」

「……さて、ラーサもさ……そこに掛けてかけて」

「んっ……?」


ミーナはそう言い私のほうを見てきた。

私は、ミーナが言ったとおりにミーナの方を向き、ミーナが使っている逆のベッドに腰を掛けた。


「で、腰を掛けたが……なんだ?」

「そだね……ラーサさ、何か薫が女性になったって聞いてからちょっと苦しそうだよね」

「えっ……?」


ミーナはそう言った。

確かに、私は薫が女性になったと聞いた時から少しだが苦しく感じていはいたが……他人には気づかれない程度だと思っていた。

だから、私は驚いた。

それを見たミーナはやっぱりね……と呟いていた。


「ラーサさ、薫のこと好きだった?」

「えっ……それは……分からない……」

「そう?アッシュは多分気づいてないと思うけどね……ラーサさ分かりやすいんだよ」

「えっ?」


ミーナが言うことに私はただただ疑問が浮かんでくるだけだった。

だって、私が薫を好き……それはないはずだ……


「ラーサさ……魔王と初めて会ったときのことは覚えてるよね?」

「あぁ……あれは忘れることは出来ないさ」

「その時もね、ラーサは何か納得した顔をしてたけど、それと一緒に苦しそうな顔もしてたんだ……」

「……」

「ラーサ……その時、何か感じたことは無い?」

「その時……」


私は魔王と初めて会った時のことを思い出していた。

……確かに、あの時私は心の中で何かを感じていた。

ただ、それが何かということは私にはまったく分からなかった。


「あぁ、感じたものがあった」

「そう……それでね薫と初めて会ったときとか何か薫とあった時とかにそんなことを感じたことは無い?」

「私が……感じたこと」


私が……感じたこと、それは……あったはずだ。

そう、私がピンチだった時に助けてもらった時だ……

あの時が感じたことが初めてだったはずだ……


「その感じはあったってことね。」

「あぁ……あった、これのことなのか……?」

「うん……それだね。分かった?ラーサがさ薫が好きだったってこと、いや今も好きなんだろうね苦しくなったってことはさ。」

「そう……なのか……私は……薫のことが好きだった……?」


ただただ、私は混乱した。

でも……ミーナに言われた私は、そのことを受け入れようとしていた。


「私は……私は!」

「うん」

「薫が好きだった……あぁ、そうかそう思うとそうなのか……だから、薫が女性になってしまったと聞いた時、驚きと一緒に思ったのか……」

「いいんだよ?泣いたって」

「あぁ……あぁ……」


私は私自身の胸の奥にあった悲しみを受け入れた……

そして、私は泣いた。

それを見たミーナは私に近づき私を撫でていた。

これが所謂、失恋と言うものなのだろう……

私自身が気づいていなかった、ただそれだけそれだけなのだろう。


「うん、泣いてすっきりするといいよ。こういうのは泣いた方が気持ちの整理ができるんだから」

「あぁ……」


私は、ミーナに撫でられながら、泣きつかれ眠りに入って行った。


☆☆☆


「はぁ……寝たかな」


私は、寝たラーサをベッドに寝かせ自分のベッドに腰を掛けなおした。


「うん、やっぱりだったかぁ……」


私は一人呟いた。

ラーサは自分にも気づかない程度に薫を好いていた、いつ好いたのかは分からなかったが、旅をしている時にたまに見た薫を見るラーサの目は恋をしている目だった。


「でも、これでラーサは大丈夫でしょ……さて、私もやることやって寝ることにしようかな……」


そうして、私はいつもの日課をやりベッドへと潜った。


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