二章 日常と目族と

二章プロローグ

それは、どこかの会議室だった。


「……ガデンして魔王様はなんと?」

「あいも変わらず」

「そうか」


その会議室では二人の人物が話し合っていた。

かたや一つ目族の長老であるガデン、かたや三つ目族の長老であるレッガであった。

この二人はあの王国に無断で攻め入る命令を下した張本人達であった。

しかして、なぜこの二人が今話し合っているかというと……


「魔王様はなぜ、人族に歩み寄る……理解しがたし」

「古から我ら魔族を虐げてきた者達であるからな……」

「魔王様の考えは先々代から変わらぬか……」


そう、魔王からの人族へと攻め入ったことへの抗議及び謝罪命令のことであった。

だが、この二人……また一部の目族は幾戦と続く人族からの侵略されていた時代から生きている者達であった。

それゆえに、現在の思考に落ち着いているのである。


「……だが、魔王様が言っていることに一理はあるか」

「ふぅむ……では、魔王様自身に此方へと来てもらうというのは」

「それしかあるまいか……」


二人はそういいあうと、一人の青年を呼び寄せた。

彼は、次世代の三つ目族長に任命される予定の人物であった。


「レッドよ、我らの考えを魔王様に伝えてくれ。」

「了解しました。」


その青年レッドはその言葉にうなずくとその場から消えていた。


「さて……魔王様が来る前に我らはいかにして……」

「そうであるな……」


レッドが消えた場所を見つめながらその二人は考えていた。



☆☆☆


最近の私は、もうすでに戻れないとこまで来ていると思う。

なぜなら……


「ねぇねぇ、義姉さま!今日も一緒に寝ましょう!」

「あ、あぁ……うん」


魔王宅に着てからというもの毎日毎日、この魔王の妹にべったりとくっつかれているからだ。

ここに来た初日と二日目は、まぁいいだろうと思ったのだけれどそれが駄目だったみたいだ。

とりあえず、いろいろと先代魔王に聞いてみたところ実姉はそれほど妹に構えなかったらしいというかいたんだ魔王に姉……

で、その姉のことをいろいろ聞いたのだけれど……まさかまさかのメイド長がその人だった。

それで、なぜメイド長がメイド長しているのか気になったので本人に聞いてみたところ。


「趣味です。それ以上でもそれ以下でもありません」


だそうだ……

ただ、趣味とはいえメイド長までちゃんと下積みはしたらしい。

でだ、話を戻すが……その二日間構っていたら、べったりとなっていた。

嫌というわけではないし、こういう妹ってものにも憧れていたりしたし。まぁ、つまるところうれしかったわけだ。

で、現状お風呂に入るのも一緒、寝るのも一緒。

役得と言えば役得だが、うん……もう考えるのはいいや。


□□□


義妹のあれやこれを考えていた数時間後

私が魔王宅で借りている部屋で休んでいるとメイド長がやってきた。


「あ、薫様魔王様が呼んでましたのでお連れいたします。」

「あ、はい」


どうやら、魔王が私を呼び出した用だった。

まぁ、この休暇っぽいのも私の身を案じてのものだからね。

で、私はメイド長に連れられるまま魔王宅から外出した。


□□□


それから、数十分。私は魔王城まで来ていた。

私とメイド長は他愛もない会話をしながらここまで来ていた。

主に妹のことを聞かれた。自分が全然構えなかった所為もあるため感謝もされた。

私的には楽しめたのでいろいろと言った。

で、そんなこんなで魔王の部屋までやって来ていた。


「では、ココから先は薫様お一人で」

「うん、分かった。」


私はメイド長の言葉に従い一人で魔王の部屋へ入って行った。


□□□


「おぉ、薫!来たか!」


魔王は私が入るとすぐさま私のそばまで寄ってきた。

そして、そのまま私は抱きしめられていた。


「なんだ!いきなり」


私はいきなりだったので、魔王を弾き飛ばしていた。

その弾き飛ばされた魔王は背中を椅子に思い切りたたきつけられていた。


「ぐっ……いたた。すまんな」

「はぁ……」


私は呆れながら魔王を見ていた。

それから、痛がっていた魔王は椅子に座りなおし私に話しかけてきた。


「さて……とりあえずさっきまでのことは無かったことにして。本題だ、先日私から、王にとある依頼をしてみた。」

「とある依頼?」

「あぁ、とある依頼だ。と言っても、簡単なものだな」


魔王は私に言ってきた。

とある依頼と言われ、私が呼ばれたと言うことは私に何か関係があるものということかな?

私がそう思っていると魔王は私にとってうれしいことを言った。


「そのとある依頼とは、まぁ簡単に言うとだ薫のパーティメンバーをこの魔国に招待するといったものだな」

「それは本当か!」


私はその魔王の言葉に非常にうれしがっていた。

それもそのはず、この数週間私は誘拐されたり、その誘拐のせいであまり他人と関わったりできなかったからだ。


「私の家にずっといると言っても息抜きが出来ぬだろうからな……それゆえにな。それでだ、王からは快く承諾が得られた。日程もこちらで決め、後で薫にも伝える。」

「そうか、分かった!」

「さて、我が伝えかったことは伝えた……でだ、今日は我と食事でもしないか?」


私の機嫌はいつも以上に上がっていた。

だから、魔王の言葉に肯いていた。

それから、私は魔王と食事をしながらいろいろと会話をしていた。

アッシュ達のことをいろいろと語った。


けれど、この時私は私にとって一番重要なことをアッシュ達に伝えていなかったことを忘れていた。

というか、魔王から伝えてもらうことを忘れていた。



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