閑話2 兵士の思い

「そこ!列を乱すな」

「ハッ」


私は、この王国の兵士長の一人ラーサである。

あの日、魔王討伐が無かったことになり、帰って来てから私の生活は再び兵士としての生活へと戻っていた。

だが、あの旅の日々を思うと少し勿体無かったかと思うことがある。

何せ、私は生まれてから旅というものをしたことが無かった。

この城での生活がほとんど基本だったからだ。

両親はどちらもこの王国の兵士であり、私もその両親を見て育った。

だから、その両親達と同じことをしたいと思った。

そして、私は兵士になりこの地位まで上り詰めた。

それからも、私は兵士として住ごしこのまま両親達と同じようになるのだと思っていた。

だが、勇者召喚されてからそれは変わっていった。


□☆□


「ラーサよワシからおぬしに頼みたいことがある」

「ハッ、なんでしょう」

「うむ、最近のことであるが、勇者召喚を行った……それで、召喚された者の世話役をお願いしたいのだ」

「勇者召喚ですか……分かりました引き受けます。」


それから、私は彼の世話役としていろいろなことをした。


「なるほど、貴方は筋がいい」

「そりゃ、どうも」


そしてほぼ占めるのが戦闘訓練であった。

彼との戦闘訓練はじつにやりがいがあるものであった。

なぜなら、彼と戦うたび彼は私が教えている技術をいとも容易く習得していくのだ。

私は教えるものとしてこれほど手のかからないということを味わったことも初めてだった。

そして、戦闘訓練がひと段落終了したころだった……


「王、魔族の者達が攻めてきました!」

「真か!……よりによってこんな時にか……兵士長を呼べ!」

「ハッ」


「およびでしょうか?」

「あぁ……して、勇者の方は?」

「万全でございます。」

「そうか、では……本来はこういうときは我らが表だってやらねばならぬが……現在が現在じゃ、頼む」

「……了承いたしました。」


それから、私は王の命令どおり勇者とともに攻めてきている魔族の者達と対峙していた。

今回攻めてきていた、魔族達はそれほど数が多くなかったが質は高かった。


私は一体の魔族と対峙し戦っていた。

そして、私は劣勢に立たされていた。


「ぐっ……」

「グァァ!」


私は体に一発、打撃を貰い吹っ飛ばされ岩に体を打ちつけた。

その衝撃で私の体は思うように動けず、目の前に魔族が迫っていた。

私は、ここまでかと思った時……


「セイヤァァ!!」


私の目の前で棍棒を振り下ろそうとしていた、魔族の上半身が下半身からずれていき、その場に落ち、下半身は倒れていた。

そして、その魔族がいた後ろには彼がいた。


「大丈夫ですか?全て片付きました」


彼はそう言い、私に手を差し伸べていた。

私はその手を取り、ほのかに顔を赤くしていた……



そして、それから私は彼の旅について行くこと王にお願いしに行き、了承をもらうことができた。

そして、彼との旅が始まった。

途中で、彼と意気があった戦士のアッシュや助けた賢者のミーナと出会い、友人関係も増えていった。



□☆□


魔王城まで着き、いろいろと魔王と話したそして、王が衝撃な一言を発していた。

隣にいたアッシュは唖然とした表情でそれを見ていた。

動かしたりもしたがまったく動かなかった。

それは、この魔王城を去るときまで同じだった。

そして、私はというとそれを聞いたとき彼に何を思っていたのか……

それは今となっては分からないが、これも良きとして心に納めておこう……

私はそう思いながら、魔王の城から去った。


□☆□


「隊長?どうかしましたか?」

「んっ……あぁ、すまんな」


私に隊の者が話しかけてきていた。

……いかんな、過去のことを思いふけていたか。


「それで、私に何か用か?」

「あっ、ハイ先ほど使用人が私達の元へ来まして、王様が呼んでいますと」

「ふむ、分かった……お前達!私は少し場を離れるが鍛錬はそのまま行っておけ。」

「「「ハッ!」」」


私は隊の者達に命令を下し、王の所へと歩いていった。


□□□


そこには私以外にミーナがいた。

どうやら、ミーナも呼ばれていたようだ。


「ミーナも呼ばれていたのか」

「えぇ、といっても何のためかは分からないけども」

「そうか……で、ミーナは現在何をやっているんだ?」

「えーと、そうですね。今は簡単に回復医やってます。」

「そうか、よく効き、賃金も安いという、回復医が最近いると聞いていたが、ミーナのことだったか」

「そうだよ!安くて安全ってね。まぁ、その分疲れまくるけどね」

「だろうな」


そんな他愛も無い会話をしていると、アッシュがやってきた。

それから、私達は王の下へ行き、王から一つの提案をされた。

それは、魔国へ行ってみないかということだった。

そして、私はそれに了承していた。

私は彼に会えるということを期待して隊の者達が待つ場所へと戻っていった。


けれど、私はこの時、まだ知らなかった彼の現状についてのことに……

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