第9話 一章エピローグ
あれから、数日たった……
あの日から、魔王は国王と約束していた王国を襲った魔族の処分について話し合っていた。
私は、私でやることがあったため城下町にいた。
「では、薫様こちらです。」
その際、メイド長に連れられ、その城下町についていろいろと案内されていた。
宿屋や武器屋などの商業区、一般的な魔族達が住む住宅区、魔王の近親や身分が高い者達が住む上級区などなど説明された。
それで……現在、その上級区のとある屋敷の前にいた。
「では、行きましょうか。」
メイド長に連れられ、そのままその屋敷に入った。
……その屋敷に入ると、その屋敷の使用人たちはメイド長を見て、その後私を見ていた。
ただ、私を見る目とメイド長の見る目は完全に違っていた。
メイド長を見る目は尊敬や敬愛で、私は何か計られているような感じだった。
そして、メイド長が一つの扉の前で止まると、メイド長は私のほうへ振り向き言った。
「では……薫様、お入りください。」
私は、その言葉にうなずき、その扉を開け中へと入った。
□□□
中に入ると、そこには屈強な魔族の男性が座っていた。
「……来たか。」
その男性は私に目線で座れと指示してきていた。
私は、その指示通りにその男性の対面に座った。
その男性は、わたしが座るのを見ると、使用人を呼び、何か言っていた。
私がそれを見ていると、後ろからメイド長が私に少々お待ちをと言ってきた。
私はその言葉に了解といい、そのまま少しの間、待っていた。
そして、少し待ち使用人が私と男性の前に紅茶を用意し去っていくと、対面に座っている男性が私に話しかけてきた。
「よく来た、我が息子の嫁になる者よ。」
そう、この男性は現在の魔王の父君である先代魔王であった。
私のやることとはいわゆる、両親に紹介されるというやつだ。
魔王は婚約者ができたと両親にはいってあったが、私がさらわれたことで紹介が遅れたのだ。
結婚式当日に紹介するとはどういうことだとも思ったが、まぁ種族柄のことらしい。
それで、先代魔王に……
「ふむ、さすが我が息子だな。良き者を見つけておる。」
普通に歓迎された。まぁ、知ってた。
で、それから、私と先代魔王はいろいろと話し合っていた。
魔王のココはいいぞとか、嫁となるからにはこれを覚えろとか……
後、魔王の家族関係について。
「……よし、では呼ぶとするか。」
そう言い、先代魔王は家族を呼んでいた。
先代魔王が呼んでから、少し待っていると、左側にあった扉が開きそこから一人の少女が私に飛びついてきた。
「ねぇねぇ、お父様これが私の新しい義姉様?」
どうやら、魔王の妹らしい。
「あぁ、そうだぞ」
先代魔王はそう言い、私に飛びついてきていた魔王の妹を自分の膝の上に移動させていた。
その先代魔王の妹を撫でながら、私に話しかけてきた。
「この子が、息子の妹だ、かわいいだろ?」
「えぇ、そうですね。」
私はそれに肯きながら、その少女を見ていた。
そして、視線をちょっと上げると先代魔王のすぐ右後ろに女性の魔族が立っていた。
「ふふ、貴方が息子の嫁ね。よろしくね」
その女性は私にそう言ってきた。
つまりこの女性は魔王の母君なのであろう。
それから、魔王一家とまたいろいろと話し合った。
その話し合いは楽しく、瞬く間に時間が過ぎていった。
「あらあら、もうこんな時間。楽しい時間とはすぐ終わるものですね。」
「そうですね。では、私は……」
私が、魔王城に戻ろうと言おうとするとそれにかぶせ先代魔王が私に言ってきた。
「ふむ、夜も遅い、それに嫁殿は一度さらわれているのだったな。」
「あ、はい」
「であるならば、今夜は泊まっていくといい。ワシから息子に伝えておこう。」
私は少し考え、了承した。
そして、私がメイド長に目をやると、どうやら元々その予定だったのか手には簡易お泊まりセットを持っていた。
「じゃぁ、ご飯を振舞わないとね!」
魔王の母君はそういい、近くにいた使用人に話しかけていた。
私は、こういうのも悪くないかなぁと思いつつ、先代魔王たちとご飯を食べた。
そして、魔王の妹とお風呂に入り、その妹と一緒にベッドで寝についた。
ただ、私はこの時、不安が頭をよぎったのであった……
☆☆☆
その女性は憤っていた。
ある者の失敗そして、ある者の生還に対して憤っていた。
そして、憎悪をそのままに言葉に出していた。
「あぁ、くそ!あの泥棒猫め……私の私の魔王様に……!本来あの位置にいるのは私のはずなのに!」
その女性は、言葉の限り言葉を発していた。
ストレスを発散できたのか、その女性が言葉を発することをやめると女性はある人物を呼んでいた。
「……ロクドウここに」
「ハッ!お嬢様なんでしょうか?」
「ロクドウ……私、決めましたわ。」
その女性は、その顔に似合った笑顔をしていた。
ただ……恐ろしいほどに。
☆☆☆
ここは、魔国王国よりもはるか北にある帝国の王の間だった。
その王の間で二人の人物が会話をしていた。
「……それはまことか」
「ハッ、魔国及び王国に忍ばせていた者達から情報であり、真実ございます。」
「そうか……やっかいなことになったな。」
その二人の人物のうちのひとり、王座に座っている人物こそこの帝国の皇帝『ガラッド=ベア』その人であった。
そして、もう一人は影の者この国の暗部の者であった。
現在、帝国では王国又は魔国に宣戦布告をする準備をしていた。
が、王国と魔国が条約を結んだことにより、出来なくなっていた。
「うむ……しかたあるまい。両国をもう少し探れ」
「ハッ!」
暗部の者が皇帝の命令に肯きその場から姿を消した。
皇帝はそれを見やり、王座に深く座りなおしていた。
「しかし、あの王国と魔国がか……見誤ったか。」
皇帝は王の間にてこれからどうするかという、ことを一人ぶつぶつと言っていた。
それから数十分立った時、皇帝は異変が起こっていることに気づいたのであった。
なぜなら、本来この王の間には兵士が3人常駐している。
皇帝が暗部の者と話す際は一時席をはずしているが、それは別室、いわゆる隠し部屋で確認しているため、終わればこの場に戻ってくるはずだからだ。
「ぬっ、どういうことだ。」
皇帝は王座から立ち上がり、別室にあたる場所の扉のスイッチを押した。
……そこには無残にも斬られている兵士たちの死体が置いてあった。
皇帝は、それを見た瞬間その部屋の扉を閉め、周りを見渡した。
「誰かいるか!」
皇帝は叫びながら、王座まで戻っていった。
皇帝は王座の周りを確認しつつ、警戒心を最大限まで上げ回りを確認すると、窓際に人影があった。
「誰だ!」
皇帝はその人影に向け、言葉を発した。
だが、その人影はゆっくりと窓を開け部屋の中に入ってきていた。
皇帝はその人影の正体に驚くと、自分が持っていた、剣を抜刀していた。
しかし……皇帝は気づいていなった。
自分の後ろにもう一人いることに
「カハッ……」
皇帝の後ろにいた人物が皇帝を貫き……そのままその皇帝を吸収していた。
すると、その人物は……皇帝のその人の姿になっていた。
「あらあらあら、やっぱり手際はいいのね」
「お嬢様のためですので」
皇帝の前に立っていた、人物が言葉を発すると、皇帝を吸収した方の人物が跪いていた。
「待っていてくださいね。私、がんばりますので」
その人物は笑っていた。そう、高らかに笑っていた。
自分が欲しい者のために全てを壊す覚悟を決めて……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます