第7話 夢魔、奥の手を使う/魔王、苦戦する
俺が、扉のそばにいた魔王を見た。
その魔王からすさまじい威圧が飛んできていた。
「貴様は、我が嫁に何をしている?」
魔王はそう俺に問いかけてきた。
俺は勇者から少しだけ離れ、こう言った。
「さぁな、……魔王様が来た時点では何もしちゃァいないが……なっ!」
俺は話しながら、魔王に向け魔弾を放った。
しかし、俺が放った魔弾を魔王は今手にしている聖剣で防いでいた。
「ちっ……おっと、危ねぇ」
俺が舌打ちをしたタイミングで魔王は、俺がいた位置に聖剣を叩き落していた。
(ちっ……なんで魔王様が聖剣を使えてんだよ……)
俺は内心でそう思いながらも、立て続けに攻撃してくる魔王の斬撃を避けていた。
すると、魔王は一時的に攻撃をやめ、俺に向けて一言発した。
「……貴様は誰の命令で動いている。」
「さぁね……それは契約上……俺は話せんな!」
魔王はどうやら、俺の後ろに誰かがいるということに気がついたらしい。
それもそのはずか……この屋敷、外から見たら廃棄された屋敷だが、
内装は今でも使われている状態で掃除が行き届いているからだ。
つまり、俺だけならばこの部屋かもう一部屋ぐらいしか掃除されていない状態でなければおかしいからだ。
「そうか……しかたあるまい、ここで死んでもらう」
「あぁ、そうかい。」
魔王は再び攻撃を再開してきた。
(ちっ……俺じゃァ魔王様には勝てん……しかたないか……効くが分からんが使うしかないか。効けば万々歳ってところだ)
俺はそう思い、奥の手を使用することにした。
……だが、その奥の手を使うためにはいささか場所が悪い。
そのため俺は、この部屋にある罠を利用することにした。
その罠とは……
「ぐっ……貴様!」
「へへっ……この位置じゃァ、攻撃できまい。」
現在、地面にうつ伏せになっている勇者のことだ。
実際には罠ではないが、魔王にとっての罠にはなるだろう。
俺は、その位置関係を保ちつつ、この部屋にある装置を作動させた。
「むっ!?」
その装置とは、俺と魔王そして勇者を別の場所へと移動させる転移装置だ。
俺は、それを使い俺たちを別の場所へと転移させた。
そして、俺が俺たちが転移に終了した時、俺は賭けに勝った事をこの時に分かり大いに笑った。
「カカカ……カカカカカカ!効いた!」
☆☆☆
「ぐむっ……ここは」
我が目を開けるとそこは、先ほどまでいた部屋ではなく、森の中にある大きな空間であった。
我は、周りを見回すと倒れている薫とその側にいる夢魔を見つけた。
「……魔王様よ、俺はこれで逃げさせてもらうぜ?」
我が、夢魔を見つけその近くまで行こうとした時、夢魔はそう言い放った。
「逃がさぬ!」
「いや、逃がすさ。これをとめない限りな!あばよ!」
夢魔はそう言い、薫から離れていった。
我は、その後を追おうとした……がその時
「ぐっ……ガハッ!?」
我はダメージを受け吹き飛ばされていた。
そして、持っていた聖剣を元々いた場所に落としていた。
我が吹き飛ばされた位置で立ち上がり、その聖剣を落とした場所に目をやるとそこには……
さっきまで倒れていたはずの薫が聖剣を手に持ち立っていた。
その薫は先ほどまで着ていなかった……いや、剥ぎ取られていたドレスを身に纏い、虚ろな目を我に向けていた。
そのいで立ちは何も寄せ付けない……死神のような不気味な雰囲気を醸し出していた。
☆☆☆
「ハッ……はっ……はっ……」
俺は森の中を走っていた。
あの、魔王から逃げ切るために奥の手の洗脳系の薬物を勇者に使ったからだ。
その洗脳系の薬物はほんとに一か八かの賭けであった。
虚ろな状態になっているとは言え、勇者だから耐性があるかと思ったからだ。
だが、俺はその賭けに勝った。
ただ一言言えば、そんなにはっきりとした命令ができた訳ではない。
さらに言えば、魔王と勇者の戦いになるはずだ、その余波でどうなるか分からない。
だから、まだ完全に安全になったというわけではない。
「もう少し……この森から出るまでは逃げないとな……」
俺は小声で言いながら、森の出口に向けて休まず走りつづけた。
そして、俺は森の出口へと着いた。
「は……ふぅ、ここまで逃げれば大丈夫だろう……」
俺は、その場で膝をつき息を整えていた。
すると、俺の前にあの女がやってきていた。
「……貴方、ここで何をしているのかしら?」
「……魔王がやってきて逃げてんだよ。」
「そう……」
女の問いに答えると、女はそのまま何かを考えていた。
……それから少し立ってから女は俺にさらに聞いてきた。
「それで……あの泥棒猫はどうしたの?」
「勇者か?勇者なら今……魔王と戦ってるはずだが」
「……そう、やっぱりね……」
女は再び何かを考えていた。
考えている女に俺は気になった事を聞いた。
「それで、何でお前はここにいる?」
「私がここにいる理由?それはね……」
「……ガッ!?」
女が答えている最中に俺は、腹の当たりから異物感を感じそのまま口から血を吐いていた。
俺は異物感を感じた場所を見ると、腹から鋭利な物が飛び出ていた。
「ぐっ……どう……いうこと……だ。」
「だって、貴方失敗したじゃない……それに……ね」
女がそういうとさらに俺の背から鋭利なものが飛び出した。
「グフッ……」
「私の魔王様に……魔王様に牙を向けてしまったからね!貴方が!」
女はそういうと俺の体から鋭利な物がたくさん飛び出てきていた。
「最初か……ら使いす……て前提だっ……たわけ……か」
「まぁ、そういうことよ……でもまぁ、役に立ったわ。ありがとうね」
女は微笑みながら俺を見ていた。
ただ、俺はその微笑みに嫌悪の気持ちを持ちながら、ただ目の前が真っ暗になった。
「……ハァ、魔王様が無事であれば……いいのだけれど……」
☆☆☆
我は、防戦一方になっていた。
「ぐっ……薫よ!目を覚ますのだ!」
「……」
薫は手に持った聖剣を巧みに使い、我を翻弄していた。
さすがに、元々の聖剣の使い手だけあって我よりうまく扱っていた。
それを我は、自ら生み出した闇の剣で聖剣を防ぎつつ薫に呼びかけていた。
「……フッ」
薫は我から少し離れ、聖剣に魔力をこめていた。
(あの魔力から、考えるに……我でもヤバイか)
我が、行動に出ようとした時、薫は聖剣を振りぬいた。
「ぬっ!?」
振りぬいた聖剣から魔力の塊が我に向けて放たれていた。
「ガッ!?」
我はその攻撃をもろに受け、その場に膝をついた。
その隙を薫は見逃さず、我に向かって斬りかかって来ていた。
我は、少し遅れ闇の剣で防いだが、その闇の剣は弾かれ、我の後方へ飛んでいった。
「くっ……しかた……あるまい」
我は再び攻撃しようとしている、薫に向け闇の波動をぶつけた。
「!?」
薫はその波動をもろに受け、後方へと吹っ飛んでいた。
続けて我は、薫に向けもう一つの波動を飛ばした。
「!?」
薫はその場で膝をつき、停止した。
後は、薫自身が元に戻るかどうかが問題だった。
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