第6話 夢魔、浸る

俺は夢魔インキュバスだ。

いつも通り、獲物を狙い、性をいただいていく。

それが俺のいつもの日常だった。

……ただ、それは一度、いや二度三度と邪魔をされた。

そうあの、忌々しい勇者にだ……

だが、どうやら運は俺に向いたようだった。

そう、あの時勇者に殺されたと思ったときからだ……


□□□


「ぐっ……はぁ……力がでねぇ……俺も……ここまでか」


俺は勇者のパーティメンバーである、賢者と剣士を獲物として幾度と戦い、そして負けた。

今、俺はその勇者に受けた攻撃によって消えようとしていた。


「ちっ……くしょうめが……ゆるさ……ねぇ絶対に……」


俺は何も出来ない自分そして、俺をこんな状態にした勇者に激怒していた。

だが、何もかわりはしなかった。

ただただ、己が消えていく感覚を見にしながら時間がたっていた。

そんな、もう己が己として消えようとしていたとき、声が聞こえた。


「ねぇ?そこの貴方……助かりたい?」


俺は、その声にただ肯いていた。


「ふふ、じゃぁ助けてあげる」


俺は、その声を聞いて意識を手放した。


□□□


俺が目を開けるとそこは俺の知らない部屋であった。


「お、俺は生きているのか……」


俺は寝かされていたベッドの上から起き上がった。

すると座っていた女が俺に声をかけてきた。


「あら?起きたかしら」


女は俺が起きたのを見ると、椅子から立ち上がり俺のそばまで寄ってきた。


「ふむ、異常なし。さすが私だわ。」


女は俺の体を触りながら確認をしていた。

俺は、とりあえず状況を整理するためされるがままにされていた。


「あ、言っておくけど貴方の能力、私には効かないからね。」


俺が状況を整理していると女はそう言ってきた。

最悪、そうしようかと考えいたところだったので衝撃を受けた。


「ふん、俺の範囲外だから問題は無い」


俺は女にそういった。


「そう、それはよかったわ。」

「で?なぜ、俺を助けた」


俺は一番初めに思ったことをその女に言った。

女は考えるまでも無いような感じですぐに言ってきた。


「フフフ、簡単なお話貴方のようなコマが欲しかったの」

「コマだと?」

「えぇ、コマよ。貴方、夢魔インキュバスでしょ。私はとある理由で貴方の種族が欲しかったの」

「そうか」


女はあっけからんと言ってきたので俺はそのまま切り返せなかった。

だが、生きているという実感が沸いてきて、そんなことはどうでもよくなっていた。


「ふん、コマか……いいだろうよ、助けてもらっているからな。」

「そう、それはよかったわ。……じゃぁ、ここで住んでもいいわ」


女は俺にそういい、部屋から出て行った。


□□□


それから、ことあるごとに女は俺に命令をしてきていた。

別に命令自体は問題は無かった。俺的にはありがたいことだったからだ。

そして、とある日のことだった。


「ねぇ、貴方、勇者って知ってる?」

「勇者だと?」

「その反応ってことは知ってるのね!」

「あぁ、あいつのことだろ……」


俺は女に、勇者のことを伝えた。


「ふふ、そう……それは都合が良いわ。」

「どういうことだ?」

「ふふふ」


女は俺に現在の勇者について俺に語ってきた。

俺はただ、驚きと……復讐の機会がめぐってきたことに狂喜した。


「そうか……あいつが女になったのか……カカカ」

「で、やってくれるかしら?」

「あぁ、願ったり叶ったりだ……カカカ、カカカカカ」


俺はただ笑っていた。


□□□


……その勇者を襲う当日になった。

俺は、女に言われ城の隠し通路を使いここで働いているメイド達の一部に暗示をかけた。

次に、呼び込む予定の部屋のものに俺特性の薬を混ぜていった。

これで、俺の準備は終わった。


そして、時間が少し経ち、その部屋を確認しに行った。


「……どうやら、効いた様だな。カカカ、驚きだ」

「よっと、フフフ、そう見たいね」


俺がその部屋を確認していると、女がやってきていた。


「さぁ、さっさと移動させようかしら」


女は勇者の前に立つと呪文を唱えていた。


「漆黒の布よ下の者を包め『黒いブラック敷布シーツ

漆黒の歪を刻まん『黒いブラックワープ』」


女は黒い布で勇者を包むとそれをそのまま歪に投げ入れた。


「さて、早速行きましょうか。あの屋敷に」

「あぁ」


この女はどこまでも読めないな……まぁいい。

そうして、俺たちは城から脱出した。


□□□


そして、今……俺の前であの勇者はいた。


「さぁ、こっからは俺の時間だ。その体でどこまで持つか見物だぜ……勇者様よォ。」


俺は勇者に向けてそう言った。

勇者は悔しそうな顔をしていた。

あぁ、これだよ……これ、復讐というものは


「さて、そろそろだぜ?俺特性の媚薬が効くのもなぁ。

しっかしだ、あの部屋にあった飲み物の茶葉に混ぜた俺特性の薬が効くとはなぁ。

女になったことで、耐性系が全然ダメになってるみたいだなぁ。」

「なっ……」


含みを持って、勇者に宣言してやった。


「だが、いつの間に……」

「カカカ……最初に使った茶葉に混ぜた薬に入ってたんだよ。遅効性のな。

さて……お前が快楽に堕ちるところをじっくり見させてもらうぜ?

あぁ、楽しみだ、元々『男』だったやつが堕ちるってところをよォ。」


俺はただ、愉悦に浸っていた。

俺は効くまで、そこにおいてあった椅子に座り勇者を見ていた。


それから少しして、勇者の体からが少しずつだが動いていた。


「効いてきたみたいだなぁ。」


薬が効いてきている勇者を見ながら、俺は笑っていた。

そして、数時間がたった。


(……さすがに勇者か。普通の女性ならもう堕ちてるくらいだからな)

「結構持っているなぁ、まぁ女になっても勇者ってわけか。

ま、今日はこのぐらいでいいだろう……まぁ、薬の効果が消えるわけじゃないけどな。戻ってきたときにはどうなってるのか楽しませてくれよ?勇者様ァ」


俺はそういい、その部屋から出て行った。


「明日には堕ちているころあいだろう……カカカ、あぁ楽しみだ。」


俺は明日に期待し自分の部屋へと行った。


□□□


そして、次の日になった。


「カカカ……さて、どうなっているかね」


俺は勇者がいる部屋へと脚を運んだ。

そこには、目が虚ろになっている勇者がいた。


「カカカ……さすがに堕ちたか。」


俺はそのまま勇者まで近寄り、勇者に触れた。


「ひぅ……あぅ……」

「カカカ……カカカカ」


俺は、ただ愉快であった。

こいつを……勇者を征服することが。

俺は勇者の手に嵌っている枷をはずし、勇者が着ていたドレスを剥ぎ取った。


「カカカ、薬で抵抗も出来ず、女になった所為で俺に犯される……果たしてどんな気分なんだろうな……カカカ」


その時だった。

俺が、ことを起こそうとした時、部屋の扉がはじけ飛んでいた……


「……!?誰だ!」


俺はその場で振り返った。

……そこにいたのは…………聖剣を手にした魔王であった。

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