第5話 魔王、考える

我はただ考えていた。


「セバス……どういう状況になっている……」

「現在ですが……薫殿がいたはずの部屋を調べたところ……何かの魔法の様なものを使った形跡がありました」

「なるほどな……」


つまり……外部犯か……だが、薫のことを話している人物は少ない。

となるとだ話している人物の誰かと言うことになる……

しかし、伝えているものは少なからず信用できる者達だ。


「それで、その痕跡……たどることは可能か?」

「いえ……不可能です。」

「そうか……」


こうなってしまっては、薫がどこにいるのか虱潰しに探すしかないことになる。

だが、伝えている者の屋敷を探すにしてもその者達の許可を貰わぬ限り無理であるし、例え探せたとしても屋敷とは無関係な場所にいる可能性もあるか……

だが、やらぬよりはましであろうな……


「セバスよ、我が命により薫のことを伝えている者達の屋敷及び部屋を探索せよ。ただし、許可を貰った場合のみとする」

「……それでよいので?」

「……しかたあるまい。我が信用できるものにしか話していないの知っているだろう?」

「そうですな……」

「このような疑うことは本来したくはない……だが、可能性が無い訳でもない……だからこそだ……」

「……御意。」


我の命に肯き、セバスは転移していった。


「ひとまずは……これでいいだろう……」


我は一言つぶやいた。

そして、今日行う予定であった結婚式を改め後日にすることをサレン達メイドに伝えに行くため自室から外に出た。


☆☆☆


「……それは真ですか?」

「あぁ、そうだ」

「そんな……」


メイド長のサレンに数時間前にあったことと結婚式の日を改めることを話した。

その際、サレンは不安そうな顔を浮かべ、我を見ていた。


「……薫殿は見つかるでしょうか?」

「あぁ、絶対に見つけるさ。なぜならば、我が嫁であるからな。」


我はそう言った。

そして、もう一つ確認したいことがあったのでサレンにそのことを問うことにした。


「それでだ、サレンよ。……なぜあの部屋に薫を移動させたのだ?」

「……どの部屋でしょう?」

「ふむ、この部屋だ」


メイド長及びその他のメイド達の部屋に備え付けられている、この城の見取り図で薫がいた部屋を指差した。


「……その部屋ですか?おかしいですね。私はその部屋に移動するよう頼んだ覚えはないのですが。」

「むっ……ということはその部屋へ連れて行った者はどこにいる?」

「いえ、私は存じ上げません……メイド達にも聞いてみましょうか」

「頼む」

「それでは、少々時間がかかりますのでお待ちください。」

「分かった。聞き終わったら、我の部屋へ来てくれ。」

「ハッ」


サレンはそのまま現在いるメイド達に話を聞きに行き、我はその場を後にした。


☆☆☆


「さて……我はどうするべきか。」


我はメイド達の部屋から出、自室へと戻る途中己ができることを模索している時のことだった。


「あらあらあら、魔王様!」

「ぬっ?」


ファランドールが話しかけてきたのである。


「ファランドールか。」

「はい、魔王様。先ほどから腕を組んで一体何を考えていらっしゃるので?」

「それか……ふむ」


……確か、ファランドールにも結婚式のことについて話してあったなひとまず聞いてみることにしようか。


「我が嫁になる予定の薫がさらわれたのでな、我にできることを模索していたところだ。」

「……そうなのですか」

「して、ファランドールよそなたは、知らぬか?」

「はぁ……あのどろ、いえ勇者ですね……私は知りませんね。魔王様のご期待に沿えず申し訳ありません。」

「いや、よい結婚式のことに関して話しているものにも聞いていたところだからな。」

「そうですか。……では、私はこれで……魔王様もあまり無理はせずに」

「それも……そうだな。」


それでは、と言ってファランドールは我から離れていった。

我は気を取り直して、再び自身の部屋へと戻ったのである。


☆☆☆


我が自身の部屋について、数時間が過ぎたころセバスが我の部屋へとやってきた。


「セバスよ、どうであった?」

「はい、魔王様が話しておられた方々全員の許可を得、屋敷を調べたところこれといって薫殿に関するものはありませんでした。」

「そう……か」


我はその報告を聞き、話している者達が裏切っているわけではないということ(完璧ではないが)に安堵していた。

だが、薫の情報が一切出てこなかったことに関して残念であった。

それから細々とした報告をセバスから受けているとメイド長のサレンが我の部屋へとやってきた。


「サレン……メイド達に聞きこんだ結果どうであった?」

「魔王様……少々、やっかいなことに……」

「どうしたのだ」


サレンは下げていた顔を上げ、我を見言ってきた。


「どうやら……夢魔とおもしき者が絡んでいるようです。」

「なに!?」


我はサレンの言葉に頭を打たれた気分になった。


△△△


我がサレンの報告に驚き、少し休んでから再びサレンに問うた。


「……ひとまず、落ち着いた。さてどういうことだ?」

「はい、メイド達に確認したところ……数名にその時間記憶がないものがおりました。」

「ふむ、それで」

「それで、その者達の本人では記憶できていない部分の記憶を覗き見たところ……夢魔とおもしき者が魅了とおもしき術をかけている部分でした。」

「そう……か。」


我はサレンの報告を聞き、ただ後悔と己の浅はかさを噛み締めるのであった。

そして、無言のまま数分の時が立ち、我は宣言した。


「……セバスそしてサレンよ、今日はこれまでとする。」

「……よろしいので?」

「あぁ、何者がさらったかは分かった。明日この城及び一日から二日で移動できる範囲を捜索せよ。分かったな。」

「「……御意」」


そのまま我は、二人が我の部屋から出て行くところを眺めていた。


△△△


二人が出て行ってから、数時間立った。


「我は……どうすればよいのだ」


我は自身の部屋でただ、つぶやいていた。


「我は……」


そして、そのまま数時間たち……窓からは日の光が射し入ってきた。


「……朝日か」


我は窓の外を見やり、ふと薫に与えていた部屋が目に入った。

その部屋を見ていると、なぜかその部屋へ行かなくてはならぬという気持ちがわいてきていた。


「薫の部屋……か、何もせずよりかはよいか……」


我は自身の部屋から出、その薫の部屋へと歩いていった。


□□□


我が薫の部屋の前に着き、その部屋のドアを開け、内部に入るとベッドに立てかけられていた剣が光を発していた。


「これは……聖剣か」


我がその聖剣を見ていると、聖剣がひとりでに動き出し我の前へと来た。


「これはどういうことだ……?」


我は目の前に来た聖剣を見ていると、聖剣は我の手の中へと収まった。

そして、我の頭の中に声が響いてきた。


(我が主人の危機……我が主人の場まで案内するゆえ……付いて来たし)


ただ、我は唖然とするしかなかったが、その声が終わってから聖剣が我の手からはなれ、部屋の外へと飛んでいった。


「今の声は……いや、考えている暇はない、あの声が言ったとおりならば……まっていろ薫よ…」


我は外へと飛んでいった聖剣の後を追い部屋からと出て行った。


□□□


我が、聖剣の後を追っていると聖剣が森の中にある廃屋敷の前で止まった。


「ここか……」


我が、その屋敷を見ていると聖剣は我の手の中へと収まっていた。

我はその聖剣の感触を確かめながらその屋敷へと踏み込んでいった。

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