第4話 勇者、捕まる

「ぐ……んっ、ここは……どこだ?」


……俺は確か、結婚式会場に連れて行かれるところだったはずだ。

そして、ここはどう見ても結婚式の会場ではなく、薄暗い牢屋のような部屋だった。

それに……


「動けないか……」


天井や床に繋がれた鎖で俺の両手足は繋がれていた。


「とりあえず、なぜこうなったか記憶を呼び出してみるか……」


□□


「これを着て行くのか……」


俺の前には特注で作ったと言われた、無駄にフリルやレースがあしらわれた黒を基本としたドレスがあった。


「……しかたないのか、はぁ」


ここ数日、女性用の服しか着ていないため、抵抗がほとんどなくなってきたな……うん。

俺がドレスの前でいろいろ考えていると、メイド長のサレンが部屋に入ってきていた。


「まだ、着ていらっしゃらないのですか?……あぁ、いえ分かりました。着かたがわからないのですね。では、少々お待ちを」


有無を言わせぬまま、俺はメイド長に呼ばれたメイド達にドレスを着せられた。

やはり、特注と言っていただけあって何から何までぴったしだった。

しかし……


「う、動きづらいな……」

「慣れてくださいまし。貴方様この後、正式に魔王様の嫁となるのですから、では私は先に会場のほうへと準備するために行きますので……」

「はい……」


メイド長はそう言って部屋から出て行った。

ちなみにあのメイド長はここ数日、俺に女性の生活をみっちりとたたきこんできた。

女性のトレイの仕方とか、メイクとか、その他いろいろ……

それに、自分自身でも思うがここ数日で俺もこの体に慣れきってしまっている。

自分が元々男だったこと忘れてしまいそうでもあった。

と言ってもどうせ男に戻れないだろうから気にしてはいなかった。

そんなこんなでいろいろ考えてながら待っていると、幼稚園児ぐらいの身長で、羽が生えた魔族が俺を迎えに来た。


「嫁様、準備が整いましたので私がお連れいたします。」

「分かった」


俺はその小さな魔族の後につき部屋を出た。

ついて出てからしばらくして


「こちらの部屋で一度、お待ちください。伝えに行きますので」

「了解だよ。」


俺はうなずき、その部屋で少しばかり待つことにした。

その際、その小さな魔族からここにあるものは使ってもいいと言われたので、

部屋にあった紅茶を作って飲んで待っていた。


□□□


「俺の記憶があるのは紅茶を飲んで少ししてまでだな……」


つまり、その紅茶に細工がしてあったわけだが……


「しかし、睡眠薬ごときで俺は意識自体手放すはずがない……なぜだろうか」


俺は、自問自答しつつなぜそうなったかをじっくりと考えていた。

それから、しばらくして部屋の外から誰かが歩いてくる音がした。


「足音からして……二人か」


俺は少し呟き今、部屋に入ってくる人物に目を向けた。

入ってきた人物は俺の知る人物が一人と見知らぬ女性が一人であった。

その俺が知る人物が俺に向けて言葉を発した。


「よぉ、勇者様よぉ久しぶりだなぁ、おい」

「お前は……ランバ!?あの時、倒したはずだが……」

「くくく、あぁあの時は死んだと思ったがなぁ奇跡的に生き残れたのよ……それにしてもまじで女になってやがったなぁ……カカカ」


そういい、ランバは俺の体を舌なめずりしながらじっくりと見ていた。

このランガという男は、俺が魔王城に着くまでの旅で出会った、男の夢魔だ。

散々、俺達の前に現れては、俺の仲間であったミーナやラーサを狙い戦っていた。

そして、魔王城に着く前に俺達が倒したはずだった敵だった。

俺とランバが話していると、一緒に来ていた女性の魔族がランバに向かって言った。


「ランバ、この泥棒猫と知り合い?」

「あぁ、知っているぜぇ……散々、邪魔してくれたからなぁ……だが、まぁ……カカカ」

「ふーん、そう、でもまだ待ってね?」

「あぁ、拾ってもらった恩も一応あるからな。」


二人の会話が終わると女性の魔族が俺の前までやってきた。


「……ふーん、なるほどねぇ、確かにいいプロポーションだけれど魔王様には到底似合わないわね。」

「そりゃどうも……」

「フフフ、強がりもいつまでもつか見ものね。さて……泥棒猫の顔も見れましたし、こんな場所に長居したくもありませんし、

私は戻りますわ。後はよろしくねランバ?」

「仰せのままに……」


そういい、女性の魔族は俺に背を向け部屋を出て行った。

すると、ずっと待っていたランバが俺を見て……


「さぁ、こっからは俺の時間だ。その体でどこまで持つか見物だぜ……勇者様よォ。」


確かに、今の俺は両手足を縛られているため体の自由が利かない……

それに、現在の俺はランバにとって格好の餌である『女』だ。


「さて、そろそろだぜ?俺特性の媚薬が効くのもなぁ。

しっかしだ、あの部屋にあった飲み物の茶葉に混ぜた俺特性の薬が効くとはなぁ。

女になったことで、耐性系が全然ダメになってるみたいだなぁ。」

「なっ……」


つまり、俺が『女』になったことで耐性系に変化……いや、違う『女』に作用するものに対しての耐性が俺についていないからか。

俺自身に女の夢魔の魅了耐性はあっても……男だったが故、男の夢魔の魅了耐性がほとんどないからか。


「だが、いつの間に……」

「カカカ……最初に使った茶葉に混ぜた薬に入ってたんだよ。遅効性のな。

さて……お前が快楽に堕ちるところをじっくり見させてもらうぜ?

あぁ、楽しみだ、元々『男』だったやつが堕ちるってところをよォ。」


そういい、ランバは近くにあった椅子に座り俺の体を隅々まで見ていた。


「………!?」

「効いてきたみたいだなぁ。」


俺の体の節々が熱くなってきた。


「くっ……あ…」


俺自身に、今まで感じこともない感覚が押し寄せてきた。

それは、体の奥から全体に広がり次第に少しずつ体を蝕んでいった。


「カカカ……さて、どのくらい持つかね」


俺は、ランバの声を聞きながらこの感覚を抑えていた。


「こ……のぐら…いで……」

「カカカ……」


ランバは俺を見ながら笑っていた。

それから、この感覚が俺の体を襲ってから数時間たった。


「結構持っているなぁ、まぁ女になっても勇者ってわけか。

ま、今日はこのぐらいでいいだろう……まぁ、薬の効果が消えるわけじゃないけどな。戻ってきたときにはどうなってるのか楽しませてくれよ?勇者様ァ」


そういい、ランバは俺がいる部屋から出て行った。

俺はそれを見つめ、ただ自分に襲ってくる感覚に身を委ねるしかなかったのであった……

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