札幌発小樽行

@mkrk

第1話 札幌駅

朝7時半ほどに、2番線のホームへ列車が到着した。

朝早く出社するのであろうサラリーマン、ちょっと派手にサングラスしている女性。様々な人が降りてゆく。でも、この時間だからか目立つのはやはり学生だ。


程なくして乗客が降りきると、すぐに列車の中へと乗り込む。

良かった、暖かい。

冬場のホームは屋根があるとは言え、凍える寒さなのは変わりない。列車の座席の下にはヒーターがあるといいのだが、困ったことにエアコンのみの列車もあるのだ。今日は足元が温められる。冷えきった足の指先が包まれた感覚。


ふと周りを見渡すと、一人の男子学生がロングシートの向こうに座っている。制服でどこの学校の生徒かは判断できないが、高校生くらいだろうか。

これがまた気持ちよさそうに寝ているのである。


授業ノートらしきものを持ったまま船を漕ぐ。小テストなのだろうか。いや、そろそろ期末試験なのかもしれない。

少し疲れているのはテストに向けた徹夜を敢行したからか、ただゲームに夢中になったのか。


足元のスクールバッグには、ひよこのぬいぐるみがぶら下がっている。男子高校生にしてはなんてかわいい趣味をしているのだろう。彼女からのプレゼントかもしれない。最近の流行りのキャラクターなのか、私は全く分からない。


そのまま靴を見てみる。赤い色をしたバスケットシューズ。かなり使い古しているのだろうか、ところどころ色がとれている。雪はかなり積もっているのに、そんな靴で大丈夫なのだろうか。お気に入りなのかもしれない。


顔はあまりよく見えない。メガネはかけていないようだ。横顔を見るだけでも、かなりのイケメンなのではないだろうか。少なくとも私よりは全然かっこいいと思った。ろくに自分の顔など見つめることなどないから、比べるのも可笑しいが。


観察から想像した彼の姿。高校生で彼女持ち、かなりのおしゃれ好き。なんとなく声が低くて重いとも感じる。成績はいたって平凡。かわいいものが好き。

こんなところだろう。



こう考えていたら、彼は飛び起きた。

バッグを抱え、走って降りてゆく。

やはり寝たままだったのか。



焦りながら駆けていく彼の姿を、階段の向こうまで見送る。


出発まであと2分ほどだ。

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