4−9

「もうジョーは、人並みに動けるようになったね。」

 ケーリーは廊下を歩きながら身長の低くなった人形のジョーを見て微笑む。

『兄さんには常々感謝しているよ。』ジョーはひょこひょこ歩きながら微妙に抑揚のある発音で答える。『ありがとう。』

「いいや、君の言う通りだった。自分の身近な人が巻き込まれてようやくジョーの言い たい事がわかったよ。植人、さぞ辛かっただろうに。」

『いいんだよ。どうせあの時死ぬ気だったんだし。死んで人形として生き直していると 思えば、何てことないさ。』

「・・・・。」ケーリーはおもわず黙ってしまった。

『兄さんもなってみれば。』

「うーん、まあ気が向いたらね。」

『ははは。』

笑い声の模写をしているのを見てケーリーは驚き、微笑んだ。

「ところで、ジョー、君に合わせたい人、というか人形がいる。」

『誰?』

「おたのしみ。」

そしてしばらくしてある扉にたどり着く。

「はい、どうぞ。」

ケーリーが扉を開けると、黄色い人形がジョーに向かってひょこひょこと走りよって くる。

『ジョー!ジョーだね!生きていたんだね!僕だよ!フルネスだよ!』

ジョーは仮面を見て驚いた。『・・・フルネス!?』

あわや死んだかと思っていた友が、人間ではないとはいえ再会できたことにジョーは喜びのような煌めきを隠せなかった。二人は抱き合うつもりだったが、腕が短かったので互いに衝突するだけでそのまま後ろに倒れてしまった。

『ありゃ。』

『ははははは。』 そして二人は起き上がる。ケーリーは言う。

「まあ積もる話もあるだろうから、僕はここで失礼するよ。」 二体は部屋の中に入り、ケーリーは扉を閉める。

『あれから何があったんだい?』 とフルネスが言ったのでジョーは言う。

『あれから、って君が偵察以降の話だよね。』

『うん。』

『処刑人がレリビディウムのアジトに襲撃してきた。』

『処刑人・・・。』フルネスがぼそぼそと言った。

『どうした?』

『いや、その、ベルーイ・・・。』

『ベルーイ?』

『あいつが・・・処刑人に殺される声、僕聞いてしまったんだ・・・すごく怖いものを見たかのような・・・あいつらしくない・・・恐ろしい悲鳴・・・』

『無理も無い。処刑人はこれから殺す人に口付けをし、その人の顔を自分のものにする力があるんだ。おそらく撮影器の応用だね。』

『ベルーイは自分の顔を見ながら死んでいったのか。』

『俺も殺されかけたからよくわかる。』

『そうだったのか。』

『まあ、続きを聴かせると、そう、ベルーイの顔をした処刑人がアジトに侵入してきた んだ。ていうか、なんでアジトの場所ばれたの?』

『王が言ってた。城下町出身の裏切り者がいる、ってね。』

『城下町・・・・・・・まさか!』

『そうね、ベルーイじゃないとしたら、アイツの連れ、ゲルマだ。』

『あの野郎、そういえば腹痛でトイレいくとかいってたな。気弱な腹痛を装って連絡取りやがったな。』

『あいつどうしてるんだ?』

『それが王国の上院議員やってるんだ。』

『なんだって?』

『ゲルマの父がアルゲバ王の犬とでも言うべき貿易商かつ情報屋で、そのつながりでゲルマはアルゲバ王兵と繋がってた。そしていい仕事につける約束でゲルマは裏切っていたっぽいんだよな。だからその流れで王没落後に議員やっていて、でも、王が変わった途端急にアルゲーノ王にへこへこしだした。僕はゲルマは信用できない、裏切り者だっていろんな人に訴えたんだけど、やつ、自衛のために色々策を施したらしく全然だめみたいだ。』

『ちくしょう・・・。』

『・・・あ、それで、その処刑人に襲われた後どうしたんだい。』

『俺は予備のアジトを知っててな。それで生き残り達とそこに向かった。レリビディウムの奴らが弱音吐いていたもんだから、渇を入れたら、ゲルマが・・・くそ、あれもわざとか・・・』

『どうしたの。』

『俺の演説に感動したとかいって積極的に作戦会議に参加したんだ。』

『あいつ、抜け目無いんだな。』

『それで城のゴミ捨て場から急襲しようとしたのだが、奴はやはりこっそり連絡したらしいな。処刑人がいきなり襲ってきて、殆どが死んだ。メラマもだ。』

『そうだったのか。』

『そこで俺も殺されかけて、そしたらタルヒが処刑人を仕留めてくれた。』

『おお。』

『あいつには頭に煙突があって、そこが弱点だったんだ。火の矢を打ち込まれて海の泥に突っ込んで、壊れたらしい。タルヒはすげえよ。』

『タルヒは・・・・。』

『タルヒは?』

『奴も王のクローンに食い殺されてしまった。』

『・・・・・。』

『・・・・・ごめん。』

『するともう僕たちとゲルマのクソ野郎しかいないのか。』

『そういうことになるね。』

『あはは、寂しいな。』

『モーリア街、遊びに来てね。』

『バウエ山にも来るんだぞ。』

『もちろん、ぜひ。』

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