3−9
もう一つのアジトは一階建ての広い建物であった。おそらく森に紛れて簡単に見えないようにするためであろう。
扉を開けた時、ジョーはアッと驚いた。
「これは・・・」
殆どが眠りこけている。レリビディウムの人々は泣きながら寝ている。起きている者もいたが頭を抱えて「うう、うう・・・」と呻いている。
「おい、これはどうしたんだ。何を泣き寝入っている!」
呻いているのはあろうことかレリビディウムの幹部であり、以前監視を命令した者であった。
「おい、どうした!」
「ランバー様がやられた・・・。今まで我々はランバー様の血筋で守られたようなものだ・・・。生き残れたはいいが、もうどうすればいいのか分からない。」
「バカ者がぁ!」
ジョーが大声を上げたので、何人かが起き出した。
「お前らはランバーが好きなのか?それとも革命がしたいのか?ランバーが好きだとしてランバーは何を望んだのか?それを考えた事があるのか?」
レリビディウムの人々が眠気眼でジョーの刺すような声を聞いていた。
「俺の恩師を紹介しよう。といってもレリビディウムの賛同者ではない。保守的な、理科教師だ。あの人は俺にこう言った。ただの違和感では世の中は動かない、とな。だからまず第一に何ができるか、考えて、予測し実行せよと。ふわふわとブレるようでは予測する時間もないと。だから自分が何をすべきか常に考えねばならないと。」
ジョーは叫んだ。
「俺は今何をすべきかわかる。あの邪悪なアルゲバ4世を殺す事。訊けばアルゲバ王4世は後継がいないらしいじゃないか。だから殺す事で容易に王政権は転覆する。そうなれば、我々レリビディウムが代表となる。その時、国民達に思い出させようじゃないか。人間という生き物が一番幸せな事は何かを!それは、自由だ!」
一気にアジト内は歓声に包まれるが、ジョーの顔が翳ったのでその声はやがて収まって行く。ジョーは声を落とす。
「残念ながら・・・・裏切り者は俺の友人の中にいた。ベルーイ・モルデンネス。やつは、”処刑人”だったらしい。恐らくフルネスはベルーイに騙されて捕らえられている。だろう。最悪、殺されているかもしれない・・・。」
「あ、あの・・・」
ゲルマがおずおずと手を上げる。
「ゲルマ、何だ。」
「ぼく、あの、その、」ゲルマは緊張していた。「あのね、ジョーの言葉を聞いて、感動した・・・心がわきあがった!!今までずっとおびえていたけれど、その、僕たちも頑張らなくちゃいけないなって・・・」
「ゲルマくん!!」ジョーは感嘆の眼差しでゲルマを見た。
「それで、思ったんだ・・・。」
「おお!何だい。」
「フルネスくんを、助けにいこうよ・・・・今すぐ。」
ジョーはその言葉を暫くかみ締めた。強く強く、かみ締めた。そしてやがて涙を浮かべてゆっくりと言った。
「お前は素晴らしい。たった今俺ですら友人を思って挫けかけていたのを、目を覚まさせてくれた。よし。では今夜二つの作戦を今から早急に組み立て、城に向かおう!王を暗殺し、捕らわれのフルネスを助け出す事。皆、強力してくれるかな!」
会場に大きな歓声が上がった。ジョーは覚悟を決める。これから待ち受けるのは、革命か、自分の死であるという事を。
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