3−4
「アルゲバの王陛下、始めまして、サレボでございます。」
南の島の実験室でヒゲ面のサングラスの男が王に挨拶をした。
「私は生まれつき目が弱い者で・・・サングラスでの挨拶まことに失礼致します。」
「それで、その人を増やす技術というのは何だい?」
「私はこれをクローンと呼んでおります。」
「まあいい。そのクローンとやらはどういう風に行うのだ。」
「まず王に知っていただきたいのは、完全に王と同じにする事は不可能であるということ。」
「そうか。」
「また、完成までに3年少しかかるということ。この二つをご了承頂けたら次に進めます。」
「よいぞ。」
「まず王には少し血を取っていただく必要があります。血には遺伝子が沢山ある。これにテラミカ光線を当てて、幾つかの回路を得て極めて細かく細分化したり増幅したりします。」
「ほほう。」
「そうして出来上がった魂の種とでも言うべきそれを、テラミカ石板ではなく、万能細胞に直接打ち込みます。テラミカ石板ですとエネルギーが弱くてただの無駄遣いとなりますが、この万能細胞に打ち込む事で、自発的な成長が始まる。」
「それで、出来上がるのか。」
「さよう。万能細胞の入ったケースには成長を安全に促進する薬が入っている。だから本来20歳ぐらいの生き物を3年で成長させることができるのだ。」
「事実上わが子となるのだな。」
「そうです。また遺伝子の特質上、提供主の中で最も強い側面が反映される事が多いです。」
「完璧なボクということだ。」
「クローンはテラミカ光線を多少改造する事で幾つか作る事ができますが」
「では、七人。」
「多いですねえ。」
「ボクはハデ好みだからなァ。」
「あとクローンの蘇生の条件は様々に設定できます。提供主の死亡や、指定した時間、出来上がったらすぐに、など。」
「出来上がったらすぐ便りを送り、わが国の港に向かってくれ。そして私の目の前に蘇生させろ。」
「かしこまりました。」
「それと、一つ質問がある。」
「何でしょう。」
アルゲバ王はずいとサレボに近寄ってここだけの話とでも言うかのように言った。
「アルゲーノ公はここに来たんだろう?」
サレボはしばらく黙って、そして言った。
「以前誰が来たかは私は言わないことにしています。」
「ふっふー、いいんだよいいんだよ。それで大体の事はわかったからな。」
アルゲバ王は立ち上がる。
「じゃあ早速血を取ってくれ。」
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