3−2
王が黒い球体を手に入れるすこし前の話である。
「現在の植人技術では、人並みに動く為にはもう少しそのテラミカ・カプセルを増設する必要があり、より巨大になります・・・」
そう説明しながら王の殺戮衝動を恐れてすこし距離を取っていた科学者だが、そんな心配は無用であった。王は両手サイズの黒い球体、つまりテラミカ・カプセルを愛おしそうに撫でていて、少なくともソレに関わっている間は殺戮衝動が起きないからである。
「・・・そうするとかなり重くなります。それを支えるために大の大人よりも1、2倍ほど大きい姿になりますが。」
「かまわないよォ。むしろもっと大きくしよう。1.7倍くらい!」
「まあそうすると安定はしますが。」
「そして、立派な殺し屋にするんだ!」
「はあ。」科学者は内心あきれていた。
「巨大にして俊敏・怪力という風には出来ないのかい?」
きわめて困難であるが・・・と迂闊に言うと王に殺されかねないため、科学者は口ごもりながら言った。
「で・・・できます。ただ、難しい工事となりますので幾つか考慮に入れて欲しい部分が。」
「なんだい?」
「おそらく王の仰る通りに設計するとかなりのエネルギーが必要です。テラミカ・カプセルが巨大になりますと熱が溜まって危険な状態になるので、ある程度排熱せねばなりません。だから動いている間どこかから蒸気を出すような奇・・・いえ、すこし動きにくい姿となりますが宜しいでございましょうか。」
(奇妙)という言葉をきくと王は酷く怒り出すという噂だったので科学者はあわてて取り繕ったのである。しかし王はそのいい間違いを気に留めない。
「ぜーんぜん。イイヨ。と言うか蒸気吹きながら走り回る大男って面白いじゃん。どうせなら道化の格好させよう。」
「は、はあ。」
「あとそれと。」
「はい。」
「顔なんだけど、この子ね、植人化する前に顔をつけて欲しいって言ってたの。それはできる?」
「勿論ですが、どの顔がよろしいですか?」
「それは訊き忘れちゃったなあ。どの顔がいいかこの子が選ぶことはできる?」
「ちょっと考えて見ます・・・。」
「頼んだぞ。」
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