2−14

「そして、えーと、そこを右に曲がってと。」

 ベルーイがリンゴを放り投げて掴むのを繰り返しながら、先を行くフルネスの案内をしている。本来ならば案内人が先のはずだが、フルネスが焦って前へ前へと進んでしまっているのである。

「そんで、左に曲がる。」

「わかった。」

 フルネスはひどく緊張していた。こんな真夜中に誰かに見つかったら少なくとも何かしら問い詰められてもおかしくはない。

「ここはしばらくまっすぐ歩いて大丈夫だぞ。」

「ありがとう。ねえ、ベルーイ。」

「なんだ。」

「もしも、革命が成功して、植人制度が廃止されたらベルーイはどうする?」

「どうするって、復学だろうなあ。」

「ベルーイはそういう人間か。」

「何が?」

「いや、なんでもない。」

「フルネスはどうするんだい。」

「僕は・・・特に何もないんだ。」

「じゃあ同じじゃないか。」

「そうかもしれないね。でも。」

「でも?」

「僕は単なる友達のつもりでジョーに接していたし、特にそういう意見とか持ってなかった。今だって持っていない。それなのに、どうしてジョーに協力してしまったのだろう。」

「そりゃ、愛情だよ。」

「え?」

 らしくもない事を言っている事にフルネスは驚いた。ベルーイはリンゴを放り投げる。

「ジョーとは良き友人でありたかったのだろう?だったら、それはそれ以上でもそれ以下でもない、そうありたい気持ち。つまり愛情だろう?」

「まあ、そうかな。」

「いいなあ。僕は愛情なんてよく分からないんだ。お父さんがつねに合理的に考えろってうるさいもので、それが習慣になってしまってね。何がよくて何が悪くて、しか分からない。別に人を傷つけるのが好きってわけじゃないんだが、どうも傷つけてしまうね。あ、」

 ベルーイが右手を左側に振った。

「そこを左に曲がると城に入れるよ。」

「おお、そうか!」

 フルネスは左に曲がった。そこは暗い陰となって若干不安ではあった。その陰の中を行くと、陰が突然大きくなってフルネスの上を覆いかぶさった。

「え」

 次の瞬間フルネスは幾多もの国軍に押さえつけられ、手錠をかけられた。

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