2−15

「遅いな・・。」

 ジョーは深夜も待ち続けていた。メラマは眠りこけている。

「ちょっと心配だな。」

「うん。」

 タルヒは眠気を紛らわすために相変わらず弓をビィンビィンとはじいている。

「そろそろ帰ってきてもおかしくないのに。」

「お?」

 タルヒは窓の外を見て言う。

「何かこっちに来てるぞ。」

「おお、誰か。」

「分からん、なんか、大きいぞ。」

「大きい?」

「頭から煙上げてる。」

「え、は?」

「頭から煙と言ったか?」

 レリビディウムの指導者・ランバーが机を離れてタルヒに訊ねた。

「あ、はい。大きな男が頭から煙。なんか道化師のような格好ですね。」

「敵襲だ!」

 ランバーが叫んだ。

「しかもよりによって”処刑人”か!」

 一気に周りがバタバタと慌しくなり、メラマもおきる。「え、なに、どういうこと?」と焦るメラマにジョーが「敵が来た!」と言った。タルヒが弓を身構えるとランバーが冷たく言い放つ。

「やめとけ小僧。”処刑人”はそんじょそこらの武器では」

 バリンという音と共に大男がタルヒの近くの窓を突き破った。丁度大男の頭にタルヒの腹が命中し「ゴフッ」とタルヒは叫んだ。前が見えない大男はグギギギギと悲鳴を上げながら頭を振り回し、タルヒを放り投げた。処刑人の頭には煙突がついていて、タルヒに軽い火傷があった。そしてその顔は・・・

「ベルーイ!?」

 ジョーは叫んだ。大男、”処刑人”の顔がベルーイそのものだったからである。”処刑人”は背中の何かを右手で掴んでむんずと振り回す。たちまち大剣が床と天井に大きな傷跡を与えた。

「うぎゃああ!」

 ランバーが悲鳴を上げる。左足が切り裂かれていた。

「ランバーさん!」

 とジョーは駆け寄ろうとしたが、”処刑人”はランバーの両肩を掴み、ランバーは叫ぶ。

「逃げろォ!皆逃げろォ!」

 その時の光景をジョーは忘れられなかった。”処刑人”がジョーに背中を向けていたのでよく分からなかったが、明らかにランバーに口づけをしていたのだ。

「おうあ、ごえ、ぐえ」

 咳き込むランバーを左手で掴み、右手に掴まれていた大剣を振り回してランバーを左肩から右腰にかけて切り落とした。それを既に予期していたジョーは踵を返して耳をふさぎ無我夢中で逃げ出した。その先にメラマがいた。すでに逃げ始めていたらしい。後ろからタルヒが来る。そして、”処刑人”の足音がずん、ずん、ずん、と聴こえる。思わずジョーは悲鳴を上げた。

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