2−11

「ウーラム先生は病気になってしまったので、代わりに私ポトスが理科の授業を引き継ぎます。」

「えー。」

 生徒があからさまに文句を言った。ポトスはどう見てもつまらなそうなヒゲの理科教師だったからだ。

「文句は言わない。私も真面目に授業を行うので、安心してください。」

「ウーラム先生は面白かったですよー。」

「仕方ないでしょう。私は面白くない人間です。」

「なんだそりゃ」「違う意味で面白いかも」「ギャハハ」

生徒の嘲笑などものともせずにポトス先生は咳払いする。「静かに。授業を開始します。」


 ウーラム先生はその後もずっと授業には来なかった。

「病気なのかな、ほんとに。」

 昼休み、フルネスはベルーイに話しかける。

「どうしてそう思うんだい?」

「いや、なんとなく。」未だにジョーの意見に影響されている事にフルネスは気づく。

「あー。」ベルーイは半笑いでフルネスを見た。「その感じだと、あれか、陰謀、とか?」

 ゲルマがブフォっと笑った。

「いや分からないけど。」


「残念だが」

横から声が聞こえた。ジョーである。

「陰謀だ。」


 沈黙。ベルーイが今度はジョーに半笑いで見つめた。

「ほう、どうしてだ?」

「私達調べたのよ。」

 ジョーの後ろでメラマがニコリと笑う。そしてそのさらに後ろでタルヒが言う。

「そうだ、ここ城下町にいる植人の一つ一つ・・・」

「そうしたら、工業街で見つけ出したシリアル番号チ・ケ・タの植人。」

「シリアル番号と生前の名前を僕らが調査したところ、」

「ウーラム・レンドリッヒの名前が書かれていた・・・。」

 それを聞いたフルネスは衝撃の余り机を見つめていた。

「面白い事言うじゃないか。」ベルーイは言う。「根拠はあるのかい?」

「はい。」

 ジョーは3枚の写真を取り出した。そこには頭に書かれたシリアル番号、そしてベルトコンベアで運ばれた部品にひたすらトンカチを打ち続ける植人の姿。その顔はウーラムに酷似している。植人の書類の拡大に書かれたウーラムの名前。

「ほう。」

「俺たちはこの学校を去るつもりだ。」ジョーは言った。「フルネス。お前の事は忘れちゃいない。どうか、俺たちの仲間となって不正と戦う事はできないか?」

 フルネスは未だ机を見続けていた。はたして国は本当に間違っているのか。今はフルネスは城下町のベルーイと仲良くしている。彼を裏切るような選択はしたくない・・・。


「僕は乗るぜ。」

 ベルーイが言った。

「え?」フルネスは驚いた。

「僕は真実の探求が大好きだ。嘘っこでガマンしてる奴らが大嫌いだ。だから正直王国もちょっとキライだった。だからお前達を気に入った。ぜひとも仲間になりたい。」

「ずいぶんと癪に障る言い方だな。」ジョーは言った。

「すまない、そうやって育ってきたのでね。ゲルマ、お前もどうだい?」

 ゲルマと呼ばれた小男はびくびく怯えながら言った。

「じゃ、じゃあ僕も。」

「フルネスは?」

 ジョーに問われてフルネスはゆっくり瞬きをする。仕方ない。どうせベルーイがあっちいってしまうから居場所は無いんだ。

「わかった。」

「よし、これで六戦士団というわけだな。」

 ジョーは笑顔で言った時、

「ジョー・プラーシックバウエ、お話があります」

 と副校長が叫ぶのが聴こえた。

「やばい、六戦士団最初の指令だ、皆、逃げよう!」

 そして六人はわけもわからずいっせいに教室から散っていった。副校長はあわてて追いかける。

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