学校編

2−1

 共通学校とは王国にすむ十二歳の子供らが義務で通うことになっている学校である。王が変わった後、ジョーは共通学校に入学した。


「浮かない顔だね。大丈夫かい?」

 見知らぬ金髪の小さな少年が話しかける。

「ぼくは、フルネス・テルンデルナッハ。君の名前は?」

「・・・ジョー・プラーシックバウエ。」

「ジョーくんって呼んでいい?」

「では君は?」

「フルネス、でいいよ。お友達になろうよ。」

「・・・。」

「・・・だめかい?」

「いいよ。」

「やった!入学始めての、友達だ!」

 フルネスの快活な笑顔に、ジョーは何となく入学前から抱えていた重く薄暗い気分を晴らしていた。

「学校長のお喋りは眠かったよね!」フルネスは眠かった話をハキハキと話す。「もうちょっと学校に入ってこんなことありますよー、とかワクワクする話、欲しかったなあ。」

「僕はまあ、そんな悪い話でもないとは思ったよ。」ジョーはなんとなく違和感を抱いて言い返した。

「そりゃそうだよ。学校長だもの。」

「まあ学校に入って勉強がんばるっていい話だなあと・・・」

 話しながらジョーは、ケーリーや両親の保守的な性格の影響を受けている事に気づいてちょっと恥ずかしくなっていた。

「ま、そうだね。」フルネスはさらりと受け流した。「あ、さっそく食堂行ってみる?」

「いいよ。」

「美味しいのかな。」

「美味しいんじゃない。」

 多分フルネスは学校の案内書などを熟読しているのだろう。食堂がどこにあるのか既に知っているかのように歩き始めていた。ジョーはバッグをガサゴソと探しながらフルネスの後を着いていく。教室の隅の脇の女の子たちの話し声が何か気になってしまうが、とりあえずフルネスの後について廊下に出て行く。十二歳。みんな、十二歳なんだよな。とジョーは思う。自分も十二歳だけれど、十二歳って客観的に見てこんな感じなんだ、と漠然と思う。あった。バッグから穴の沢山開いたパンチカード。学生証であり、穴の形で自動的に識別するらしい。食堂に入ると、受付に植人がいた。ジョーは、ア、と思わず小さな声が出た。

「いらしゃいませ 学生パンチカド 置いてくださ」

 不明瞭な自動音声が、白い仮面の植人の頭に開いた口から発音される。右手の平がカウンター机の上に置かれていて、フルネスはその右手に学生証のパンチカードを置く。すると、植人の右手の平からパンチカードの穴の形に針山が生える。

「フルネス・テルンデルナッハ くん 配給受付にて お待ちくださ」

 もう針が引っ込んだカードを受け取ってフルネスは配給受付に向かう。

「ジョー・プラーシックバウエ くん 配給受付にて お待ちくださ」

 ジョーもカードを受け取って配給受付に持って並んだ。受付には複数の植人が高速でトレイに皿と食事を盛り付けているのが見える。フルネスがトレイを持って去ったので、ジョーも食事が配られるのを待つ。あっというまにトレイに昼食分が出来上がったので、ジョーはそれを持って行ってフルネスの後に着いて行く。好物のブラムのゆで卵があるのも嬉しかったが、今まで家では食べる事のできなかった巨大な根菜オルレリナがシチューにあって、すこしジョーは胸がドキドキしていた。

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