1−3

 秘密基地とは、プラーシックバウエ家の裏の山にちょっと歩いた所にある岩の洞窟の事である。二人が秘密基地に選んだのは、この山にオバケが現れるとの噂が以前からあって誰も近寄らなかったからである。

 「今日こそはオバケがでるかな。」

 「さあね。いるのかもわからないし。」

 「それで、ケーリー。続きを聞かせてよ。」

 「ああそうだね。」

 ケーリーはランタンにチラチラと照らされた宝石―二人の収集品である―を見ながら話し始める。

 「だれかに聴かれちゃこまるからここで話すんだけど。」

 「うん。」

 「僕、王国大学目指してるんだけどね。」

 「うん。」

 「そこでどうにかして植人の研究しようと思ってるの。」

 「そうなんだ。」

 「どうしてかというと、ぼくも植人のやり方はあまりよくないと思っているの。」

 ジョーは驚いて目を見開く。

 「そうなんだ。」

 「まず植人の説明をするとね、まあ詳しいことはむつかしいから簡単に言うけど、人間固有に持つ魂を、一端黒い球体のカプセルに封じ込める。両手の平で包み込めるくらいの大きさだよ。」

 「ほお。」

 「それを手とか足とかの役割をする機械を繋げて、訓練させる。」

 「うん。」

 「問題はね、カプセル内の魂が色々思う事はできても、カプセルに繋げる機械の動きしかできないし、分からないという事。だから今日見かけた郵便受けのお兄さんは、耳が無いから何も聴こえ無いけど、口の中にハガキが入った事、腹の中で住所が書いてあるのが見える事、それを分別する手がある事しかわからないしできない。これではほんと、考える機能のためだけに人の魂を無駄に使ってて、どうも勿体無いな、効率が悪いなと思っていた。」

 「色々つなげて人間らしくできないのかい。」

 「それをするには沢山の機械が必要だし、その機械を制御するカプセルも必要だが、今の技術ではすごく大きい。大男になってしまう。」

 「そうなのか。」

 「だから小型化できないかなあ、研究させてもらえないかなあと思うんだけど・・・」

 「だけど?」

 「罪人が人間らしくなるのを王がお許しになられるだろうかがちょっとね。」

 「・・・。」

 「ちょっとまって、あれ。」

 ケーリーがランタンを持って暗がりを照らす。

 「ケーリー兄さん、どうしたんだい。」

 「何か見てた。」

 「え?」

 ケーリーはランタンを左右に振る。右、左、右、左、右・・・の所に赤い何かが立っていた。それは皮膚が殆ど無く肉がむき出しになっている人型のようなものであった。歯も異様にとがっていて目も黒目があるのかわからない。”彼”はこちらに笑いかける。

 「うわあああ」

 二人は思わず一目散に逃げ出し、暗い洞窟の中を駆け抜ける。いつのまにか入り口に着いて、二人ともぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁとため息をつく。

 「大丈夫か?」

 「ああ、うん。」

 「化け物がいるという噂、本当だったんだな。」

 「もうあそこ秘密基地にできないな。」

 「そうだな、仕方ないけど。」

 「次どこにしよう。」

 「うーん、思いつかないや。またどこか探そう。」

 「そうね。」

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