ホットスプリング村の怪奇の書 2P
村長が“森の図書館”を訪れて、数分。
ルベル達は馬車に乗っていた。
助けを求めていると知るやルベルはすぐに馬車を呼んで、村へ急ごうとしたのだ。さらに相棒であるロッソを眠ったまま馬車へ放り投げたのだ。
その火急の行動に村長も呆気にとられるばかり。
確かに急いではいる。それでも依頼者よりも急ごうとする解決人というのが珍しかった。
だが不思議と不安はなかった。ギルドの建物に入る前、あれだけ不安しかなかったのに、今は妙な安心感があった。
それはきっとルベルの言葉なのだろう。
「急ぎましょう。今も困ってるならここで話すより馬車で話した方が良い。さあ」
馬車に乗る時に掛けられた言葉。
この人物は真に困っている人の心が分かる。
そう思わせる熱が、言葉から感じれたのだ。
だから村長はルベルを信じ、問題を全て話した。
話し終えるとルベルはペンとノートを取り出し、さらさらと文字を書いていく。その速さたるや凄まじく顔ほどあるページびっしりと文字を書く時間にかかったのは僅か数秒。
そして一回指をパチリと鳴らす。
「村長さん。今ここにある装備でどうにかすぐにでも解決できそうです」
ルベルは村長へ頬笑みかける。
ハッタリや嘘をついている様には見えない。
そしてルベルはロッソの頭をトントンと何度か強めに叩く。しばらくしてようやくロッソは大きな欠伸をしながら目を覚ます。
「おう。で、また依頼か? 解決できそうなのか」
「それはお前も協力してもらわないと」
「そうかい。どんな問題が起きたんだ」
「ホント寝てて聞こえてなかったのか」
「ちょこちょことは聞こえてたが夢と混じってる感じがする。だから最初から聞かせてくれ」
「はいはい。簡単に言えば畑が荒らされてるんだ」
「野党にか」
「違う。ゴーレムだ」
「ゴーレム? 土の化物か」
「そう。土であったり泥であったり。そもそもゴーレムでこういった2種の違ったイメージが湧くのには理由が有って、そもそも自立稼働する仕組みとしてポピュラーなのが錬金術の」
その喋り口調にロッソが大きくため息をついて、ルベルの頭を叩く。
「今はそういった時じゃねーよな。話進めろ。お前は脱線しやすくて駄目だ」
「悪かった悪かった。で、土の化物ってことで最初はポピュラーな撃退法である水を掛けたんだ」
「まあ依頼をしてくるってことは効かなかったんだよな」
「まあな。正確には少しは効果があったんだが、すぐに乾いて結局撃退には至らなかったらしい。もちろん水量、水の質、水の勢いとか色々と試したがダメ。さらに俺達より前に色々と頼んだんだが結果誰も止められなかったんだ」
「止められない? どんな方法を使ったんだ」
「打撃による物理的な破壊。破壊自体は成功するがただ再生能力が高くてすぐにそこら中の土を吸収し戻るそうだ。今回のゴーレムは乾燥したものなんだが、一応泥とかそういったマッドゴーレムに効果的な火を使っても結局は効果出ず。風による風化を狙ったが、残念ながら再生能力によって結局は風化せず。あとは……」
そこでロッソがもう良いと手を上げる。
「なんにせよ。通常のゴーレムとは違うってわけか。で、俺は何をすれば良い?」
「穴を掘れ」
「穴か」
「穴?」
それに思わず村長も反応する。
「ちょ、ちょっと待ってください。落とし穴で埋めて終わりってことですか」
「そうではありませんよ。あれ? もしかして浮遊してるとか凄く速かったりしました」
「いえ。そういったわけでは。動きはむしろ緩慢です。だから人的被害もまだ出て無くて」
ルベルはコクコクと頷いて見せる。
「では問題ないです。まあ今までの情報を総合した中で一番可能性が高いものだから絶対とは言えませんが」
「とか言って、大概お前の予想はあたるけどな」
それにロッソが冷やかすように笑う。
いや信頼なのだろうか。
「では村に着くまで、先に今回の奇怪なゴーレムのタネ晴らしをすると……」
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