グリモアイーター

村人Y

ホットスプリング村の怪奇の書 1P

 村長がその扉に手を掛けるまで多くの者を頼った。

 しかし誰も村長の望む結果は得られなかった。村の怪異事件を解決できるものはいなかった。

 何度も何度もギルドの人にお願いした。ギルドの互助会に頼み、何度も現地に来てもらい解決を試みてもらった。

 だがダメだった。誰ひとりとして、解決の糸口すら掴めなかった。

 そして村長は藁をも掴む気持ちでギルド“森の図書館”を訪れていた。

 そこにいる者の異名は知っている。


【グリモアイーター】


 さらにもう一つ付けられた異名も知っている。


【魔法が使えない魔法使い】


 由緒正しい、それこそ血筋で言えば王国でも指折りの魔法使いの名家として生まれ、才能がないため捨てられ、一人で生きていくことになった哀しき人物。

 それでも魔法を使いたいと憧れ、魔導書を買い漁り、それこそ国内だけでなく国外のありとあらゆるあらゆる魔導書を買っては試したが結局は魔法が使えない哀れな人物。


 だが村長は思ったのだ。それほどの魔導書を読んでいるのなら今回の事件。魔法が使えないという技量は問題だが、何かしら解決できる糸口ぐらいならこの能力のない人物でも見つけ出せるのではないか。

 それに、村長としてはもう頼るべき者は彼しかいなかった。

 村長は意を決し、扉を叩いた。


「ルベル・ルビクンドゥス殿はおられるか。どうか村を助けてもらえないだろうか」


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